2011/12/19

ぼくたちのインターン日記2011(その2):ハチ公バスの話


先日、渋谷のRock oN Companyさんへ機材の受け取りに行ってきました。その道中に起きた出来事です。

サイデラ・マスタリングからロックオンさんまではハチ公バスで約20分、「神宮前3丁目」停留所から乗り、「高齢者ケアセンター」で降ります。


僕はサイデラ・マスタリングのインターンシップを経験する為だけに愛知県より上京しました。ハチ公バスに乗るのは初めてのお上りさんです。愛知では普段バスに乗る事がないので、バスの中で執り行われているしきたりをほとんど知らないのです。

まず、バスに乗り込んで料金の支払いです。これはパスモを使って、問題なし!なんだ、楽勝です。席に座って外の様子を観察します。なんだか面白い形の建物がいっぱいあって面白いです。外を眺めていると目的地のアナウンスが。ボタンを押すタイミングが分からなかったので、周りの様子をうかがいながらポチッと押してみました。うまくいったようで、無事降りる事が出来ました。
ロックオンさんに着いて無事機材を受けとり、帰路につきます。何にも難しい事はないじゃないかと思っておりましたら、ここからの帰り道がです。

帰りのバスに乗っていると、渋谷区役所で停車。何かと思っていると運転手さんに「乗り換えてください」と言われました。バスでも乗り換えが必要なんだなと思いながら運転手さんの指差す方に進むと、代々木競技場というバス停に着きました。乗り換え場所がずいぶん遠い気もしましたが、気にせずバスを待っていると、反対車線のバス停にバスが。「やられた!」と思い向かいのバス停に行くと案の定そちらが正しい方です。
またしばらく待っていると、赤いバスが来て、運転手さんに「このバスは神宮前3丁目まで行きますか?」と聞くと、少しクいぎみで「行きません」と言われ、早々に扉を閉められました。この時乗り換えを指示してくださった運転手さんの「青いバスに乗れ」という(なんだかストーンズのアルバム名みたいな)指示を思い出しました。青いバスがやってくるのを待ち、乗り込もうとして先ほどと同じような事を聞くと、「行きません」とはっきり言われました。
またしばらくすると、乗り換えの指示をくれた運転手さんのバスがやってきて、ちょっと笑いながら「もうすぐバスが来ますから」と教えてくださいました。ようやく本来乗るべきバスが来て、そして無事サイデラ・マスタリングに帰ってきました。

東京のバスはなんて難しくて、なんて複雑なんだろう。そんな事を考え窓から東京の風景を眺めていると、少し愛知県が恋しくなりました。



2011/12/08

ぼくたちのインターン日記2011(その1):プラッサ・オンゼ編


最近さっそく風邪をひいてしまいました。こんな時こそ暖かい国の音楽が聴きたくなりますよね!!
というわけで今回は青山にある、ブラジル音楽とお食事を楽しめるライブレストラン、PRACA11(プラッサ・オンゼ)にお掃除に行ってまいりました!!

プラッサ・オンゼは、ほぼ毎日ライブやジャムセッションを楽しむことができ、本場ブラジルの有名アーティストも出演する、とても素晴らしい場所であります!(恥ずかしながら今まで全く知りませんでした!)
お店を切盛りするのは、オーナーのクラウディアさん。とっても明るく親切で、エネルギッシュなすばらしい女性です!!「お客さんにお金をもらうのだから、下手な演奏は絶対にさせない!!」と、プロッフェッショナルな姿勢で、30年近くハイレベルなブラジリアンミュージックを届けています。

今回の僕たちの仕事は、機材周りのお掃除。まずはミキサー周りの回線をメモし、ケーブルを抜いていきます(結構ホコリかぶってました!!!)。ケーブルを抜いたら機材周辺の掃き掃除にとりかかり、次にケーブルをひたすら雑巾で拭いていき、無水アルコールをつけた綿棒とコットンで、丁寧に端子についた汚れを取り除いていきます。この時、綿棒の先が毛羽だってしまうようでは、まだまだ修行が足りない証拠です。うまくなればなるほど、綺麗な形を保ったまま汚れを落とすことができます。


ケーブルを磨き終わったら、機材周りの配線を元通りに繋いでいきます。しかし、僕たちのメモ不足のため、若干混乱してしまいました。マッシュさんの助けを借り、無事結線することができました!!最後に回線チェックをして音がちゃんと出ることを確認し、無事終了しました。掃除が終わった後には、おいしいお菓子とブラジルのお茶「マテ茶」をいただきました。
クラウディアさんありがとうございました!!またお邪魔させていただきます!!!


サイデラ・インターンシップ・プログラム:
1995年サイデラ・マスタリングのスタジオ開設以来伝統的なインターンシップのプログラムにはプラッサオンゼの音響機器周りの「掃除」があります。まずは笑顔で現場の空気になじむ。


2011/10/20

サイデラ・マスタリング流おいしいコーヒーの入れ方



このところ寒くなってきましたね。そんなこれからの季節、サイデラ・マスタリングでは僕たちが、お客様がスタジオ作業の合間にホっと一息つけるよう、おいしいコーヒーをお出しすることを心がけています!

こだわり その1
~コーヒー豆へのこだわり~ 
当スタジオで使うコーヒー豆は、ブラジル産のストレート豆をミディアムローストしたものと決まっています!
ソフトな甘味とほのかな酸味。こ んがり焼いたような香ばしい香りが特徴のおいしい豆です。
先週、これが売り切れでコロンビア豆にしたら、いつもとちがう、ポットの残りを煮詰めてしまったようなひどい酸味と苦みで大ひんしゅくでした(汗)。

こだわり その2
~入れ方のこだわり~
サイデラ・マスタリングには伝統のインターンシップ制度があり、インターン生がおいしいコーヒーの入れ方を日々研究し「コーヒーの入れ方マニュアル」としてまとめています。研究の結果がこれまでのものより優れたものであれば、マニュアルは改良されていきます。つまり、サイデラ・マスタリングのコーヒーは、日々進化していくのです!

ここで、サイデラ流のコーヒーの入れ方をご紹介。
使用するのは一般的なコーヒーメーカー。でもコーヒーメーカーに豆と水を入れてボタンを押して終わり、ではありません!!

1.豆をフィルターに入れる!
豆をフィルターに入れる際、分量はすり切りで正確にはかります。
豆を入れた後軽く揺すって、平らにならします。
マッシュさん流はこのとき呪文を唱えながら指でくぼみを作るそうです。(映画「かもめ食堂」の真似だとか)

2.カップにお湯を注ぐ!
規定の分量より多めの水を入れ、コーヒーメーカーのスイッチをオンにします。まずお湯を落とすのはコーヒー豆の上にではなく、なんと空っぽのカップの中。理由は2つあり、1つはコーヒーメーカーから出たてのお湯は温度が低すぎること。もう1つはあらかじめお湯を注いでカップを温めておくのです!
カップが冷めているとせっかくのコーヒーも味も半減してしまうので、コーヒーを注ぐまでにカップを温めておきます!規定のメモリまで水が減ったら、カップと豆入りのフィルターを入れ替えます。

3.お湯を注ぐ!
コーヒーメーカーにまかせるままにお湯を注いでは、豆全体にお湯が浸透しないため、おいしい成分が抽出しきれません。そのためサイデラ流では、コーヒー豆全体に上から円を描くようにお湯を注いでいきます。こうすることによってフィルター内の豆が均一にお湯を吸います。

4.蒸らす!
コーヒー豆全体にお湯が染み渡ったら、コーヒーメーカーの電源を一旦ストップ。30秒蒸らします!この間に新鮮な豆なほどお湯を吸って大きく膨らみます。サイデラで使う豆はもちろん大きく膨らみます!!

5.再びお湯を注ぐ!
30秒の蒸らしが終わったら、再度コーヒーマシンの電源をオンにし必要な分のお湯をもう一度注いでいきます。この時もフィルターを回し円を描きながらお湯を注ぐ。するとコーヒー豆が呼吸をしながら、コーヒーが抽出されていきます。

6.コーヒーをカップに注ぐ!
お客様へお出しする前に必ず自分の舌で味見をします。「味見しないのはモニターしないでプレイバックをお客様へ聴かせるのと同じ」。なるほど。

これで完成!!!!!

もうお分かりですよね?サイデラ・マスタリング流コーヒーの入れ方では、ペーパードリップの基本的な動作をコーヒーメーカーで再現しているのです!この一手間で仕上がりがまるで変わってしまうので僕たちはコーヒー入れからも学ぶことが多いのです。

是非ともコーヒーを飲みに、サイデラ・マスタリングへお越し下さいませ!!
スタッフ一同、心よりお待ちしております。

2011/09/14

サイデラ・モーニングセッション #046「はじめてのコンボリューション〜音の迷信と真実~」


有限会社サイデラ・パラディソ サラウンド戦略推進室主宰
「サイデラ・モーニングセッション #046」特別講座(90分/無料)のお知らせです。

9月20日(火)9:00-10:30AM(今回は講義が中心で特別90分拡大版です)
テーマ:【はじめてのコンボリューション〜音の迷信と真実~】
スペシャルゲスト講師:小脇 宏(富士通テン株式会社
場所:サイデラ・マスタリング (最寄り駅;東京メトロ外苑前、JR原宿)
http://www.saidera.co.jp/paradiso/map.html
参加申し込み:<saraudon009@gmail.com>まで、メールにてお名前/会社(学校)名をお知らせ下さい。オーディオ、音楽関係の編集者、教員、講師の方などを優先します。優先枠5名、一般枠5名(抽選)。サイデラ・マスタリングのお客さまもちろん優先します!


信号処理エンジニアなら、IR(インパルス応答)は当たり前の知識ですが、録音エンジニアやミュージシャンにはなじみが少ない言葉かもしれません。「MP3圧縮とEQ(イコライジング)ではどちらが音の劣化は大きいの?」音の物理に詳しくない方にも理解出来るように工夫しながら、音評価の基本である「IR」と音変化の基本メカニズムである「コンボリューション」という2つの概念を中心に、EQやMP3での音の劣化を数値やグラフで確認しながら「いい音の本質」に迫ります。またこれによって「タイムドメイン理論」の本質も理解頂けると思います。当日はタイムドメインのエバンジェリスト、インパルス応答を語らせたら日本一の小脇 宏先生(富士通テン株式会社)をお迎えします。ECLIPSEのフラグシップスピーカーTD712zMk2も試聴頂けます。また当日はプロサウンド誌の取材が入ります。

タイムドメイン、フーリエ変換、インパルス応答などについて事前に予習しておきたい方は、こちらを参照:
http://www.eclipse-td.com/technology/timedomain.html
http://www.eclipse-td.com/technology/impulse.html
http://www.eclipse-td.com/


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2011/08/27

DSDによる高音質配信を開始

サイデラ・レコードでは、e-onkyo music 及び OTOTOY よりDSDによる高音質配信を開始しました。
まず下記の4タイトル。まもなく2010年9月のブラジル、アマゾンで世界初の5.6MHz DSDによる収録の音を再構成した「Amazon Forest Morning」「Amazon Forest Evening」も配信開始いたします。またサイデラ・レコード以外のアーティストの作品もサイデラ・マスタリングでDSDマスタリングの上で、発売していきます。

■■■■■ e-onkyo ■■■■■ 購入はこちら
- DSD (2.8MHz DSF) ¥4,200-
- HD (192KHz 24bit) ¥3,150-
- HD (96KHz 24bit) ¥2,100-
■■■■■ OTOTOY ■■■■■ 購入はこちら
- DSD (2.8MHz DSF)+mp3 ¥4,200-
- HQD (48KHz 24bit) ¥2,100-
- 44.1KHz 16bit ¥2,100- ★





『Bar del Mattatoio/Seigen Ono』計11曲、62分
『バー・デル・マタトイオ(屠殺場酒場)/オノ セイゲン』

すみずみにまで神経と熱情が行き届いた、手織りの絨毯のようなアルバムが2枚。(中略)2枚とも、過剰な繊細さが場合に酔って退屈さと取り違えられそうな気配もなきにしもあらずだが、こういう、流行とは無縁の、独自のヴィジョンを持った作品は、短時間での大量消費にばかり目が向きがちなメイジャー・レイベルでは、とても作れないだろう。ココロザシの高さが、気持ちいい。(←松山晋也/MUSIC MAGAZINE /2nd Feb 1995より)
「最優秀録音盤」「愛聴盤No.1」解説:カエターノ・ヴェローゾ(英訳:アート・リンゼイ、和訳:細川周平)
録音:1988-1994 東京、パリ、ニューヨーク、リオ・デ・ジャネイロ、サンパイロ、ミラノ。多彩なミュ-ジシャン(計47名)によるモンタ-ジュ録音オブジェ。
★ OTOTOYの44.1KHz16bitだけは、1994年のグレッグ・カルビによるオリジナルCDのマスターです。それ以外は、2011年のオノ セイゲンのDSDマスタリング。DSD, 192KHz, 96KHz, 48KHz 24bit mastered by Seigen Ono at Saidera Mastering, Tokyo, 2011,
44.1KHz16bit mastered by Greg Calbi at Masterdisk, N.Y.C., 1994.



『Seigen Ono Ensemble Montreux 93/94 /Seigen Ono Ensemble』計11曲、66分
『セイゲン・オノ・アンサンブル/モントルー 93/94』

ジャズのフェスティヴァルとして世界的にも有名なスイスのモントルー・ジャズ・フェスティヴァルへ招待された時の音源。1993年、1994年と続けて8ヶ国のミュ-ジシャンが一同に会して日本では見られない豪華オ-ルスタ-ズフェスティバルのディレクター/プロデューサーのクロウド・ノブスが『バー・デル・マタトイオ』のデモテープを聴いたことで急遽実現した。ライブならではの独創的感触、マジカルな雰囲気、デリケ-トなメロディ-、ニュ-・ディレクション、もっともエモ-ショナルなアンサンブル。解説:クロウド・ノブス
★ OTOTOYの44.1KHz16bitだけは、1994年のテッド・ジェンセンによるオリジナルCDのマスターです。それ以外は、2011年のオノ セイゲンのDSDマスタリング。DSD, 192KHz, 96KHz, 48KHz24bit mastered by Seigen Ono at Saidera Mastering, Tokyo, 2011,
44.1Khz16bit mastered byTed Jensen at Sterling Sound, N.Y.C., 1994.



『NekonoTopia NekonoMania/Seigen Ono』計11曲、37分55秒
『ネコノトピア・ネコノマニア/オノ セイゲン』

ジョン・ゾーン、宮野弘紀、ヤヒロトモヒロらを迎えてのわずか4時間で完成したスタジオアルバム。NHKテレビドラマ作品のサントラ。
DSD, 192KHz, 96KHz, 48KHz24bit mastered by Seigen Ono at Saidera Mastering, Tokyo, 2011



『Berliner Nachte/Seigen Ono』計6曲、59分33秒
『ベルリンの夜/オノ セイゲン』

12弦ギター1本だけで1時間におよぶ作品。
1988年、家具の国際見本市ミラノサローネの際にミラノのMattatoio(食肉処理工場)で行われた”pallucco”の伝説のコラボレーションプロジェクト”Furnuture shown under film light”(あのジャン・コクトーの「美女と野獣」の撮影監督アンリ・アレカンが照明、オノ セイゲンが作曲とライブ演奏、ピーター・リンドバーグが写真)のために、当時ミラノに滞在していたオノ セイゲンが作った音楽が、この『ベルリナー・ナハト/オノ セイゲン』の「パート1~4」だ。今回、『ベルリンの夜/オノ セイゲン』には、2011年7月、新たにトラック1「ベルリナー・ナハト・メモリーズ」トラック6「ベルリナー・ナハト・リフレイン」が、ミキシングされ付け加えられて、ようやく完全なアルバムとなった。また「パート1~4」も最新のDSD技術により、まったく新たなリミックスであるかのような、ダイナミックレンジ及びアナログ真空管のあたたかみが感じられる。
DSD, 192KHz, 96KHz, 48KHz24bit mastered by Seigen Ono at Saidera Mastering, Tokyo, 2011


ロング・インタビュー
「音質の行方 vol.1」オノセイゲン氏インタビュー
http://ototoy.jp/feature/index.php/20110815

インタビュー
「DSDの素晴らしさは音楽が好きな人ほど分かるもの - オノ セイゲン氏に訊くDSD配信の魅力」
http://www.phileweb.com/interview/article/201108/05/103.html

2011/08/18

夏の風物詩

暑い日が続いていますがいかがおすごしでしょうか?
デスクの今井です。

今井の夏2011はフェスから始まっています。

最初は葉加瀬太郎主催今年10年目の「情熱大陸Special Live Summer Bonanza 2011」
ごった煮とはまさにこの事。
客層もベイビーからおばあちゃんまで。こういう空間大好きです。
ちなみに赤れんがでは同じ日に「ウクレレフェス」とやらがあったとか。来年はそちらにも顔を出してみたいです。

次に「Summer Sonic 2011」
もはや3大王道フェスですよね。今年は有名どころわんさかで、情熱大陸ライブとはまた違ったごった煮でした。

また、友人が代々木公園での「オクトーバーフェスト」に出演しているためちょこちょこ観戦へ。

今井は雑食なので、オススメフェスがあれば是非教えてください!

そんな中、私も小さいながら夏らしい企画をご用意しました。
題して「酒と色女と音男vol.2」前回は渋谷NOB、今回は江ノ島海の家ALOHA TABLEにて。
酒が美味くなるための企画なので、ある意味ごった煮です。
私はライブペイントバンド「ShipprT」にて主にジャンベ担当です。
ノーチャージなので江ノ島に起こしの際は是非★




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2011/08/11

Mushとデザート

暇すぎると、ふといつもと違うことにハマることってありますよね。
初めまして。デスクの今井です。

Mushさんも、そんな時になんとお菓子つくりにはまり、
しかも結構本気だったようで、
一番の力作は「レモンケーキ」だったとか。

お菓子つながりで、今日スタジオにいらっしゃった方から
TORAYA CAFEのあんぱんいただいちゃいました★
小倉あんとこしあんと、ついでにケーブルの宣伝www
これです。


ちなみに私は「日曜大工」にはまっています。
暇があっては地域のDIYコーナーへ行き、
工具にみとれ、金具を物色したり。

これって不思議と音楽とかアート分野にいる方々は
よく当てはまるのでは??
お話を聞いてると、
案外皆さんいろんなものにハマっているようです。
そこから新たな感性が磨かれたり??

皆さんは、どんなことにハマってますかね?


ついでにちょっと宣伝を。
イベントやります!

■イベント名:酒と色女と音男vol.2
■日時:8/20(土)
14:30 open
17:00 start
20:00 close
■場所
海の家Aloha Table(片瀬江ノ島駅徒歩5分)
■出演
OTOGUMI'/あなあくやまい/でいとりっぱー
NOEL/ShiropT(ライブペインティングバンド)ando more...
■HP
http://sakeiromeotona.web.fc2.com/
■mail
sakeiromeotona@gmail.com
ぜひみなさんコンタクトとってください!


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2011/08/09

お盆

デスクの阿地方(あちかた)です。
そろそろ、お盆ですね。
スタジオのお隣の空き地はひまわりが咲き
全力で夏を感じる今日この頃。
先日、夏を満喫しようと海へと出かけ、
喜び勇んで海に入り、
1分もしないうちにクラゲに刺され涙を流しました。

夏がはじまったと思いきや、
すでにお盆と知った一日でした。

犯人画像


LINK:
[特集]海の危険生物(クラゲ)
新江ノ島水族館「クラゲファンタジーホール」



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2011/08/08

0.5デシベルのアップ/ダウン


0.5dB(デシベル)の違いが、微妙なニュアンスの表現につながります。
高音質配信などダイナミックレンジの広いサウンドを扱う時にも必須です。

(1)オケとボーカルのバランス
(2)ロー、ミッド、ハイ帯域
(3)アタックを強調
(4)インプット・レベル


[ 解説 ]
(1)オケとボーカルのバランス。
「ボーカルちょっと大きめ/小さめ」という場合、まずは0.5dBアップ/ダウンで聴いてみましょう。ボーカルトラックを1.0dB大きく/小さくするとオケとヴォーカルは、離れすぎてしまうことがあります。音数の少ないR&B、バラードなどは、ボーカルの音像(声の輪郭)が大きく聴こえますから0.5dB小さめ、リズム楽器だけでなく、シンセ、ストリングスなど色々な楽器が入った音数が多いオケの場合は0.5dB大きめのテイクも念のため押さえておくといいですね。


(2)オケのバランスとは一つ一つを細かくバランスをとることは当たり前ですが、3バンドやシェルビングEQでざっくり調整するとサウンドの方向性が見えてきます。帯域はロー(~120Hz)、ミッド(120Hz~4kHz、6kz前後)、ハイ(4kHz、6kHz~)辺りで分けます。DAW内でミックスしているとレンジが広過ぎて中低域に厚みがなく感じる事があります。ミッドレンジを0.5dB程アップするとアナログ機材を通したようなローエンド、ハイエンドが少し落ちたかまぼこ型のバランスになり、厚み、密度のあるサウンドを得る事が出来ます。またトータルでコンプをかけるとシンバルやハットがシャカシャカ目立って歌の存在感がマスキングされることがあります。COMPの前にEQでハイを0.5dB下げることで、相対的にロー、ミッドレンジにコンプかかかりやすくなり歌の存在感がぐっと増します。


(3)ミックス時、キックやヴォーカルを強調してもサウンドに変化が無い、リズムがタイトに聴こえないときは音の芯、輪郭がはっきり聴こえにくい事が考えられます。EQでアタックや声の芯を強調する場合も0.5dB単位のアップ/ダウンからスタートすると良いでしょう。キックの芯は柔らかめなら100Hz、固めなら120Hz、スネアは1kHz、1.2kHz、1.4kHzで音楽に合った質感を選びます。僕はヴォーカルは1.1kHを基本にしてます。女性ヴォーカルなら1.4kHz。アーティスト、ジャンルに合わせて周波数は細かく変えましょう。


(4)ヘッドアンプ、AD/DAコンバーター、アナログEQ、アナログCOMPなどアナログ入力のある機材はすべて入力レベルで音質が微妙に変化します。透明感のある音質を得るには、当たり前ですが歪まないレベルで入力します。さらに0.5dBステップで徐々に大きくしていきます。ある程度入力レベルを大きくしていくと音質が「特に変化無し」→「明るい/透明感有り」→「歪みが出始める」という3段階に変化するところがあります。機材にもよりますが、歪みが出始める瞬間からだいたい0.5dB下げたポイントがスイートスポットで「明るく透明感あるサウンド」を得ることが出来ます。そこからさらに0.1dBずつ微調整すれば更にイメージ通りのサウンドを得る事が出来るはずです。音質は若干異なりますがプロツールスなどDAWのマスターフェーダーの入力レベルについても同様の方法でニュアンスのコントロールが可能です。

2011/07/22

ミックスマスターのレベル(その3)「音量レベルの小さなミックスマスター」


本日は音量レベルの小さなミックスマスターについて。

メリットはズバリ音質の良さです!ヘッドルームに余裕がありレベルオーバーにより歪むことがないためハイエンド/ローエンドまできれいに伸びて、演奏のダイナミクス・奥行き・広がりが繊細なところまで再現されます。クラシックやジャズはもちろん、ポップスやロックでも声や楽器の質感をナチュラルに表現したいときはレベルを入れすぎずにミックスを仕上げましょう。瞬間的なピークでも-1.0dB程度までに押さえた音量レベルがベストです。アウトボードや、複数のプラグインをインサートしての音作りでも、ミックスマスターの音量レベルはヘッドルームに余裕を持たせることで歪まずにクリーンなサウンドを得ることが出来ます。

また、みなさんもミックスでEQをすると思いますが、「ブースト方向にEQ」することが多いのではないでしょうか?ヘッドルームに余裕がなければEQでブーストすることでマスタートラックは、ピークに達して音が硬くなったり歪むことがあります。複数の帯域を、例えばボーカルなら声の芯(1.0kHz)、輪郭(6kHz)、倍音(16kHz)などでEQする場合はより多くのヘッドルームを持たせましょう。またEQする帯域が増えるとEQカーブの重なりでフレーズによっては思わぬピークが生じることがあります。

意外だったのが、ミックス時に出来るだけ音量を入れた方がマスタリング後の仕上がりの音量を大きくできると思っている方が結構いること。そんなことはありませんよ!小さめのミックスでもマスタリングで十分に音量を大きく仕上げることはもちろん可能で歪ませずに聴感上で大きなレベルをつくり出すことができます!マキシマイザーを入れたくなる気持ちもわかりますが、一度バイパスさせてモニターしてみましょう。ミキシングで音量より大切なことは「音楽としてのバランス」です。演奏が分かりやすく聞こえること。歌とオケのバランス。音量レベルやモニターシステムが替わってもニュアンスが変わらないことです。

2011/07/21

優先順位1位はマスター・テープのアーカイビング


音楽が好きな人には、ようやく「本当の意味でのレコード」を楽しめることができる時代がきた!

97年をピークにパッケージCDの売り上げはシュリンクしているが、音楽は決してなくならない。携帯型プレーヤーやPCにMP3で1000曲も保存している人も少なくないだろう。しかしそれは情報を間引きされた音で、ジャンルによっては別物と言えるほどに音楽の重要な部分が欠落している。それほどにオリジナルのレコーディングとは違う音なのである。責任ある発言という意味で私は、録音エンジニアという職業のほかに、作曲家としての活動も続けているが、少なくとも私自身のマスターについては、CDとマスターとは異なる音楽体験である。まあ、それほど印象が変わらないCDがあることも認める。


レコード会社、原盤制作会社、レーベル運営、ミュージシャンで自分でCDなどを作っている方々へ。

倉庫代の節約という理由ですでに廃棄してしまった場合は取り返しがつかないが、手元に(保管庫に)アナログ・テープがあることが判っている場合、今すぐ始めないといけない優先順位1位はマスター・テープのアーカイビングである。ハードディスクのスペースや予算を考えたら、96kHz 24bitでデジタル化しているからそれで十分だという意見も理解できる。この10年以内にPro Toolsなどで制作されたマスターは、それでもよいであろう。重要なのは、それ以前の1/4インチ、ハーフインチなどアナログ・マスターテープである。温度湿度の管理がなされていてもアナログテープの劣化は早い。サイデラ・マスタリングでは、STUDER A-80、A820、Dolby-SR/Aのメインテナンスとトランスファー用のケーブル、電源周りまで管理されている。熱処理(ベーキング、オーブン入れ)して、正しい調整により、5.6MHz DSDにアーカイビングしていく。ハードディスクの価格も手頃になり、このタイミングで5.6MHz DSDでアーカイビングできることは画期的である。私自身のマスターも、5.6MHz DSDでアーカイビング後はついに廃棄!とした。後悔しないぞ。ポップス、ジャズ、フュージョン、クラシック、演歌、とりわけ歌の上手い歌手、名演奏のマスター、とにかくアナログ・テープは、5.6MHz DSDでアーカイビングが必須である。希望される場合、同時にDSDマスタリングも受託しているので、どうぞ遠慮なく問い合わせてほしい。2.8MHz DSFあるいは96kHz 24bitにダウンコンバートして高音質音楽配信も可能。これで「本当の意味でのレコード」が楽しめる。

サイデラ・マスタリング
シニア・エンジニア:オノ セイゲン


2011/07/12

ミックスマスターのレベル(その2)「ミックスで音量レベルを入れるときは」



最近では優秀なプラグインのおかげでかなり音量レベルの入ったミックスマスターも多くなりました。今回は音量レベルの大きなミックスマスターについて。

ミックス段階でフルビットに近いレベルを入れることのメリットは「限りなく製品CDに近い音圧感でサウンドをチェック出来ること」です。常に最終形に近いかたちをモニターしながら制作することで楽曲の方向性は非常に明確になります。レンジ・バランス・ボーカルの抜けがバッチリならマスタリングではほんの少し透明感や抜けをプラスするだけでOK。レベルの大きいミックスは迫力が出るので、必ず小音量でもプレイバックしてみて歌詞・演奏が伝わりやすいか?声の芯・キック・スネアのアタックなどがしっかり聴こえるか?忘れずにチェックしましょう。

逆にデメリットとしては、音量レベルの大きなミックスマスターはサウンドのキャラクターやニュアンスが決まっているので、マスタリングでミックスの方向性と違う音作りは難しい。広がり・奥行きを出したい場合やナチュラルな質感で仕上げたい場合も、一度迫力・音圧のあるようつくられた音源からこれらのサウンドに仕上げるには限界があるので音量レベルの大きなミックスマスターは避けるべきです。ナチュラルな質感ながら音量を入れたいときは、楽器に輪郭があり、音像が大きく、ハイハット、ボーカルの子音など特定のピークが無いミックスは聴感上音量が大きく聴こえるため、レベルを入れてもナチュラルさを失うことを抑えられます。

また多くの方は24ビット/48kHzなどCDフォーマット以上でミックスしているので、音量やバランスがいくらバッチリでもマスタリングで16ビット/44.1kHzのCDフォーマットに落とし込む必要があります。ミックスマスターをただ機械的にCDフォーマットに変換すると24ビットから16ビットの場合で単純計算で8ビット分情報量が下がります。ミックスマスターからアーティストが理想としている楽器の音色・演奏のグルーブなど音楽的な要素を引き出しアーティストの気持ちをリスナーに伝える作業、あるエンジニアさんの言葉を借りると「意思のある16ビット/44.1kHz」に変換するのがマスタリングです。ジャンルに合ったサウンドに仕上げること、アーティストの求めるわずかなニュアンスの違いをサウンドで表現すること。様々なテクニックでそれらを積み重ねることで情報量が下がってもリスナーに伝わるサウンドに仕上げることが出来ます。

2011/04/15

ミックスマスターのレベル(その2)「ジャンルごとの適正レベル」

ミックスマスターの入力レベルについて何度かに分けて連載します。
(その2)「ジャンルごとの適正レベルとは」。

J-POPやHIP HOPではレベルを入れることで生じる”歪みの要素”が音楽をよりパワフルに聴かせるためのスパイスとなります。が、ジャズやクラシック、アコースティックのジャンルでこれをやるとステージの空気感、アドリブの細かなニュアンスを失います。人間の耳は歪みにとても敏感です。工事現場の音、エンジン音などが大きく聞こえるのはその中に歪みの要素が含まれているからです。はっきりとわかるまで歪ませるのではなくニュアンス程度に歪ませると音の透明感が増したり、厚みのあるサウンドに聴こえてきます。こちらは前者のジャンルに有効な手段です。

ミックスマスターのレベルがギリギリまで大きなもので、歪む事なく大きく録音され、しかもバランスが完璧な仕上がりであればAD/DAコンバーターのキャラクター、ケーブルのキャラクター違いでファイナルタッチを加えるのみでマスターを仕上げる事が可能です。少ないプロセスで音作りが出来るためナチュラルで鮮度のある仕上がりになります。ただしオケとヴォーカルのバランスなどもきちんとそろっている必要があります。一方レベルがギリギリまで入っている音源で奥行き、広がり感を引き出すことはとても難しい作業になります。プレイバック送りのレベルを下げ、EQで前に出したい音、後ろに下げたい音を整え、コンプで輪郭を付ける作業もわずかな処理しか出来ません。一度音がつぶれてしまっている音源からアタック感、切れ、スピード感を取り戻すことは出来ません。

ジャズやクラッシックでは楽器の出音だけでなく演奏しているホール、ライブハウスの響きを含め録音する必要があります。音が出る瞬間、消える瞬間の細かなニュアンスをいかにとらえるかが大切です。そのためミックスマスターはヘッドルームを十分にとって仕上げます。そうすることでアドリブの緊張感、空気感、アンサンブルの美しさを表現することが可能になります。

逆に音量レベルが低すぎる音源の場合、レベルを大きくすることは可能ですがノイズが問題となります。アナログテープで録音していた時代はSNが悪くサーというテープヒスノイズが目立つので歪む一歩手前で録音することが基本でした。デジタル録音でもダイナミックレンジを十分に生かすには赤が点灯しないように、ヘッドルームを最低でも0.5dBから1.0dB程度空けて録音するのがベストです。

適正レベルで録音された音源では最終的にナチュラルに仕上げることもレベルを入れて音圧のある仕上げも可能です。理想的なTDマスターはメーターの振れよりも聴感上大きく聴こえる音源です。そのために必要な要素は音像が大きく、芯があり、ナチュラルで輪郭がはっきり聴こえるサウンドです。

音量を大きくしたいのであればおぜひ任せください。アナログ、デジタル、DSDの中から楽曲に合った最適な機材を選択し音量が大きく、奥行きのあるサウンドに仕上げます。

2011/03/10

歪みを判断するモニター環境


TD音源にはアーティストが演奏に込めた思い、グルーヴ、エンジニアの機材やスタジオのこだわりなど音楽的な要素がたくさん含まれています。しかし、予期せぬ音楽的でない要素が含まれてしまう場合があります。その判断が最も難しいものの一つが歪みです。

歪みには「音楽的な歪み」と「電気的な歪み」があります。前者はギターアンプや真空管機材、アナログ機材などによってアーティストやエンジニアが意図的に作り上げたサウンド。後者はマイクロフォンやデジタル機材の入力オーバーなどで歪んでしまったサウンドです。

真空管機材やアナログ機材に適切なレベルで入力したサウンドは心地良い「音楽的な歪み」が加わります。「音楽的な歪み」はJ-POP、ROCK、R&Bなどのマスタリングにおいて、音量や迫力、勢いをプラスしてくれるとても重要な要素です。しかしあるレベルを超えてしまうと耳障りな不快な歪みを生じてしまいます。マスタリングにおいて、このレベルの臨界点を判断出来るモニター環境は非常に重要な要素です。

マスタリング作業ではアーティストやエンジニアが込めた音楽的な要素を隅々まで聴き取る必要があります。そして歪みにおいては、それが音楽的か否かを判断しサウンドに織り込むことがで確実にリスナーに伝わるサウンドを作れるからです。

サイデラ・マスタリングのモニターシステムは上記の要素を完璧にクリアしていますのでどなたでも安心して判断できます。もちろんこのサウンドにたどり着くまでにはあらゆる機材の設置方法、ケーブルの選択、振動対策、ルームアコースティックの調整など試行錯誤を何百回と繰り返しました。現在も毎日の調整は欠かしません。モニタースピーカーの調整はこつこつ微調整を繰り返しながら少しずつ改善するのがいちばんの近道ですね。それが自分の耳を鍛えることにもつながります。


2011/03/09

難関、ピアノのマスタリングEQ


マスタリングでヴォーカルに次いで音作りが難しい楽器がピアノです。88鍵のピアノの音域の基音は最低音ラで27.5Hz、最高音ドで4186Hzと、非常に周波数レンジの広い楽器です。つまり他の楽器の周波数帯域と非常に重なりやすい。ベーゼンドルファー、スタインウェイなどピアノの種類はもちろん、ホールや録音ブースの広さ、マイクアレンジによって音色も大きく異なります。本日は難関、ピアノのマスタリングでの音作りについて。

ピアノは弦をハンマーで打ち鳴らす楽器なので、ハンマーが弦に当たるアタック感をどう表現するかキーポイントです。アタック感がないとスカスカのピアノの音になります。

ピアノのアタックを出す為に次のポイントを理解しましょう。88鍵のピアノの最高音ドは4186Hz(およそ4kHzと覚えて下さい)。ということはそれ以上の帯域は倍音によって構成されているので音の芯を出すにはこの周波数より下の帯域で音作りします。

1. 音の芯を出す 1.2kHz〜1.6kHz
2. 艶を出す 2kHz〜4kHz
3. 透明感を出す 4kHz〜8kHz
4. 低域の暖かみ 120Hz〜250Hz

[ 解説 ]
1. 音の芯はヴォーカルよりも少し上の帯域を使います。ヴォーカル同様にピアノの輪郭を出したければこの中で低い周波数、オケに馴染ませたければ高めの周波数を使います。

2. この周波数は等ラウドネス曲線を見ればわかるように人の耳が最も敏感な帯域です。強調することで音量感が上がりますが、音色まで変化してしまいやすい帯域なのでまずは音の芯を出してから補正程度に使います。

3. この周波数をほんの少し強調すると透明感が増しますが、ハットやシンバルなどの金物もこの帯域に存在するのでオケとのバランスをとりながら最後に調整します。

4. 音色が固く感じた時は低域を上げると響きが豊かになり相対的に高域のアタック感を抑えてくれます。打ち込みのピアノ音源で低域が存在せずにEQが引っかからない場合には高域を抑えます。

ピアノの音作りには生演奏を聴いて体感するのが一番です。ぜひジャズのライブやピアノ・ソロコンサートで本物演奏の素晴らしさ、音色を体験しましょう。

PS.ピアノのマスタリングにはDSDマスタリング本当にいいですよ!

2011/03/08

ドンシャリ音源の処方箋「周波数帯域のバランスを整える」


まれに、TD音源がドンシャリにあがっていることがあります。ローエンドとハイエンドの伸び過ぎで音の芯がない為ヴォリュームを上げても音圧感が出ない。TDをスモールスピーカーのみで行っていたか、あるいはモニターが「かまぼこ」だった可能性が考えられます。本日はそんな時のマスタリング、ドンシャリの処方箋。

まずはローエンドを抑えることから。マルチバンドコンプ(の場合はコンプはかけない、レベルコントロールのみ)などの帯域分割で100Hz前後から1dB〜2dB下げて聴いてみます。キックのアタック感が出なければさらに30Hz辺りからローカットフィルターで緩やかにカットします。

次に高域のチェックです。シャカシャカしやすい楽器はハイハット、シンバル、シェーカー、タンバリンなど。まずこれらの楽器が出過ぎないようにオケに馴染ませます。マルチバンドで4kHz辺りから少しカットします。音質が変わるようなら8kHz、10kHzと周波数を上げていきます。低い周波数からカットした方が輪郭のある音を作ることが出来ます。

100Hz〜10kHzはフラットで、それ以上、それ以下の周波数は緩やかなカーブでロールオフするようなバランスを整えると、一つ一つの楽器がしっかり聴こえ良いバランスに仕上げる事が出来ます。レンジのバランスを整えたら次に個々の楽器の音作りです。

どのようなシステムでもバランス良く聴かせるにはセンター成分の楽器、キック、スネア、ヴォーカル、ベースをどう聴かせるかがポイントです。一番最初にヴォーカルの質感を決めます。EQポイントは声質によって様々ですが、声のエッジを出すのは1kHz〜1.5kHzをプラスします。1kHzが一番輪郭がはっきりしますが声が硬く聴こえる時は少し周波数を上げます。1kHz、1.1kHz、1.2kHz、1.3kHz、1.4kHz、1.5kHzと周波数を変えながらオケとのバランスを聴きます。周波数を上げていくと声が柔らかく聴こえる瞬間があります。そこから少し下げたところがスイートスポットです。このポイントが見つかれば他の帯域をEQしても声質が変わらず存在感のあるヴォーカルを表現出来ます。

キックは120Hz〜180Hzをプラス、スネアの抜けは6kHzをプラス、ベースは60Hz前後をカットしてキックとのかぶりを調整し抜けを良くします。マルチバンド、ローカット/ハイカット・フィルターでバランスを整えると少ないEQで音作りが出来ます。マスタリングの作業は個々の楽器の音作りに注目しがちですが最初のバランス調整が最も大切な作業です。そのためには周波数レンジを的確に判断出来るモニタースピーカーが必要です。スモールモニターだけではバランスが分かり難ければヘッドフォン、ラジカセ、PCのスピーカーなど色々な環境でチェックしてみて下さい。

2011/03/07

ラインケーブルの取り扱い6つの注意点


「Saidera Ai SD-9003」ケーブルは現場での使用を想定しシース(SD-9003で言えば赤い外皮の部分)がしっかりと作られています。それでも取り扱いを間違えると断線や接触不良などトラブルが起こり得ます。「ラインケーブルの取り扱いの基本」です。

1. ケーブルの抜き差しはコネクター部分を持って行なう。
2. XLRケーブルを接続したときは「カチッ」とロックがかかったことを確認。
(まれにある、機材側がロックがないコネクターの場合は確実に接続されていることを確認)
3. ケーブルは適切な長さで使用する。短い方がロス無く信号を伝送することが出来るが、最短の接続でも綺麗なアールを描く長さで。ケーブル側コネクターの根元が90°に曲がっているときは短すぎ、プラス20センチは必要です。
4. LR同じ長さのケーブルを使用する。パワードスピーカーなどに使う場合、片側がミキサーやオーディオI/Fに近くてもLRで長さは統一。
5. ケーブルは決して投げない。ハンダ付け部分にクラックがはいり接点不良の原因となります。
6. 定期的にクリーニングする。数ヶ月使用し続けると端子が酸化しますので無水エタノールなどでクリーニングします。
(コットンや綿棒で拭くだけでも十分効果があります)
併せてお読みください↓
ケーブルのメンテナンス(その1)「XLRケーブルの定期クリーニング」
ケーブルのメンテナンス(その2)「RCAプラグの定期クリーニング」

これらは基本中の基本ですので特に音響を学んでいる学生さんは今のうちにマスターしておいて下さい!現場では早い・安全・確実が求められます。そして笑顔も忘れずに。

2011/03/03

DSDマスタリング(その5)「DSDマスタリング、ヴォーカルとローエンドのEQ」



「DSDとPCMでEQは違いますか?」という質問を頂きますがもちろん違います。DSDのサウンドはスピード感があるためハイをEQしなくても十分に抜けが良い。ジャズやクラッシック等の生演奏音は柔らかいのにフワッと抜けてきますね。「柔らかいのに抜ける音」をDSDマスタリングでつくることが出来ます。

まず初めに注意をひとつ。DSDのサウンドはローエンドの伸びとハイエンドの伸びがPCMとは違います。DSDでのEQは50Hz以下、10kHz以上のレンジをほんのわずかEQしただけで音質が変化します。つまりローからハイまでバランスの良いモニター環境が不可欠です。

EQで特に難しいのがヴォーカルとローエンドの音作りです。僕はヴォーカルを響き、芯、倍音に分けて考えますが、自分がイメージしたサウンドを得るためにはみなさんが想像する帯域よりも低い帯域をコントロールすることが多いです。ヴォーカルの芯は1kHz前後、響きは500Hz前後、倍音は16kHz前後の帯域を調整します。倍音のEQは0.2dB程度プラスするかあるいは全くしない場合もあります。

また、DSDのローエンドは非常に豊かなヴォリューム感があります。そのまま再生するとローが多すぎる時はマルチバンド・コンプで帯域を分け少し下げてから作業します。クロスオーバーは50Hz〜160Hz。ローエンドは何もしない状態が一番透明感がありますが、まとまりを良くしたり、音圧を出したい時はローカットします。透明感を出すなら25Hz、まとまり重視なら27Hz前後からカット。どこからカットするかはキックとベースのバランスを確認します。

DSDのサウンドはほんの少しのEQで音が大きく変化します。EQを大きく動かさなくても音色をコントロール出来るから音楽のバランスが崩れません。何度言いますがDSDの音作りで一番大切なのは分かりやすいモニター環境です。分かりやすいモニター環境なら安心して最後のファイナルタッチを加えることができます。「ケーブルの違い、機材の違い、0.1dBの違いってこんなにちがうの」ということはぜひ立ち会いマスタリングで体験して下さい!


2011/02/28

DSDマスタリング(その4)「肝となるアナログケーブルの選択」



サンレコ誌主宰の「Sound & Recording Magazine presents Premium Studio Live」などでDSDレコーディングの音の良さはご存知ですね。「DSDレコーディング」は演奏の空気感、リアリティーがそのまま録音出来ます。アーティストの細かなニュアンスをありのままに録ることが出来る。サウンドはナチュラルで立ち上がりが速く艶があります。

録音、MIXをPCMで行っている場合でも、DSDマスタリングのサウンドは強力に良いというのを知ってもらいたい!本日はDSDマスタリングの音作りについて。

CD用マスタリングでの「DSDマスタリング」とはマスタリング時のプレイバックをDSDで行うマスタリングのことを指します。TDマスターが初めからDSDの場合はもちろん、48/24などのPCMの時もKORG AudioGateでPCM→DSDアップコンバートを行いKORG MR-2000Sで再生します。

しかし、ただMR-2000SでプレイバックするだけではDSDの良さを表現することは出来ません。MR-2000Sにしっかりと振動対策を施し、アナログ機材やラインケーブル、電源ケーブルを駆使してプレイバックする際に音作りの土台をしっかり築き、ジャンルにあった調整を行うことでDSDの良さを最大限に活かしたDSDマスタリングが可能です。

KORG MR-2000SはDSD/Analogコンバーターを内蔵していて、アウトはキャノンまたはピンのアナログです。そのアナログアウトのケーブルの選択がDSDマスタリングでは肝になります。これまでのPCMマスタリングでは低域を豊かに表現するためにトランスペアレント MUSICLINK Superを基本に作業していたのに対し、DSDはローエンド/ハイエンドが十分に伸びているサウンドなので、100Hz〜4kHz前後、キック/スネア/ヴォーカルの芯が出るアクロテック8Nケーブルを使用。電源ケーブルはセンター成分がしっかり出るアレグロケーブルを使用しています。センター成分をしっかり出すことで大型のオーディオシステムだけではなく、ヘッドフォンやPCのスピーカーなど口径の小さなシステムで聴いてもパンチのある音作りがDSDマスタリングでも可能になります。

2011/02/21

サイデラ・マスタリングのモニターシステム構築論


先日は”音の朝活”サイデラ・モーニングセッションで「ラインケーブル・ADコンバーター徹底視聴」を行いました。細かなサウンドの違いへのこだわりの積み重ねが最終仕上がりを大きく左右することを参加いただいた方に体感してもらいました。マスタリングで「細かなサウンドの違い」を正しく聴き分けるには「解像度の高い、色付けのないモニター」が必須です。
本日はサイデラ・マスタリングの徹底したモニター環境のポイントをいくつか解説します。

[ スピーカーセッティング ]
スピーカーはしっかりした台に置き、左右の角度やリスニングポイントからの距離はミリ単位で調整します。ポイントとなる低域の調整は鉛板などでの振動対策とインターロッキングによる拡散で行なっています。部屋全体の響きは吸音というよりも調音に近い。SONEXとグラスウールを定在波のある場所に貼り、試聴を繰り返しながら微調整しました。 吸音しすぎていないのでロスがなく小さなワット数でもかなりのモニターレベルを出すことが出来ます。スタジオはスピーカー両側には十分な広さと天井高も4.4メートルあるので奥行きと広がりのあるモニターを実現しています。

[ 機材セッティング ]
機材のセッティングのポイントは振動対策と放熱です。機材はTAOCのボード、フラワーボード、檜の集成材、厚手のシナ合板などの上に置いています。ラックマウントの機材はネジの種類と締め方にこだわっています(すぐに出来る音質アップの2つの方法(機材の設置 基礎編)参照)。低域に暖かみと厚みをプラスするため多くの機材は木材の上に置き、もちろん部分的に金属のインシュレーターを使用してレンジとバランスを調整します。放熱を良くするため機材は出来るだけスペースを空けて設置すること。特に必要な場所には扇風機を取り付け空気の流れを良くしています。機材は熱を持ちすぎると音がだれて来るのでしっかり対策する必要があります。

[ ケーブルの選択 ]
モニターラインのラインケーブルにはSaidera Ai SD-9003、電源ケーブルはACROTECの製品をリファレンスにしています。その選択の基準は「色づけがなく、レンジが広く、立ち上がりの速いケーブル」です。

モニター環境の調整は(1)最初にルームアコースティックの調整、(2)それから機材のセッティング/調整、(3)最後にケーブルの選択という順序で行ないます。聴き慣れたリファレンスCDの音を基準にルームアコースティックの調整、その他全ての機材の調整を行ないます。時間はかかりますが正しいモニター環境を作るにはこの方法が一番近道です。

2011/02/18

DSDマスタリング(その3)「歪みの少ない透明感のある声、槇原敬之/林檎の花」


JR東日本東北新幹線の新青森駅開業のCMですでにみなさんお馴染みの、槇原敬之さんニューシングル「林檎の花」のTD音源はKORG MR-2000Sで録音された5.6MHzDSDデータでした。最近はWAVなどのPCMデータをKORG AudioGateでDSDデータにアップコンバートして作業する「DSDマスタリング」の手法を多くとっていますが、やはりDSDレコーダーにダイレクトにTDされたサウンドは違う!優しく暖かみがあり抜けてくるヴォーカル。エンジニアTさんに質問したところ、
「MR-2000SにTDするようになってから、EQをほとんど使わなくなりました。PCMに落とす時は声の抜けを良くしたり、輪郭をつけるためのEQをかけていましたが、DSDは高域をEQしなくても抜けるのでどんどんシンプルな処理になっています。」
「音の透明感が違うのでリバーブのかけ具合も変わりました。」
とのこと!PCMの場合DAW上でのバウンスやマスターレコーダーへのハイサンプリング録音でも音質が若干変化しますが、MR-2000Sに録音すると録音前と後で音のニュアンスがほとんど変わりません。MR-2000Sのインプットスルーを聴きながらTD作業をすればエンジニアのイメージしたサウンドに限りなく近く仕上げることが可能。これがDSDが他のフォーマットに比べより音楽的に仕上がる要因のひとつです。

今作のDSDマスタリングではEQ、COMPを施す前に音の土台作りをしっかり行ないました。まずエンジニアTさんがTD時に聴いていたサウンドを再現するために録音に使用したワードクロックROSENDAHL Nanoclocksを再生時にも使用し、これにより低域の厚み、高域のレンジが増しピラミッド型のバランスの良いサウンドになりました。さらに声の輪郭、存在感を出すためにアレグロの電源ケーブルを使用。(DSDマスタリング(その1)「透明感のあるアナログサウンド」を参照)このケーブルを使うと音像が大きくヴォーカル、キック、スネアなどモノの楽器が前に出て来ます。

EQは補正程度に。ヴォーカルの芯を出すために1kHzを1.4dBプラスしました。まさに「高域をEQしなくて済む」のでより歪みの少ないクリアーで透明感のある声に仕上げられます。COMPはレシオ1.6:1、アタックタイム50ms、リリースタイム300msでごく浅くかけました。アタックタイムを遅めにしてヴォーカルではなくキックに反応させリズムをタイトに仕上げています。

サウンドは2011年3月11日(金)発売のCDで、ぜひ確認してみて下さい。

『クラーク志織 7人の音楽評論家の肖像展』

2月19日(土)より弊社1Fではじまる展示のお知らせをいたします。
お誘い合わせの上、ぜひお立ち寄りください。

新進気鋭の画家クラーク志織が、第一線で活躍する7人の音楽評論家に会いに行き、肖像画を描きました。カラフルでPOP、愉快にみえる世界の中にどことなく哀愁がにじみ出ているのはなぜでしょう?肖像画に添えられるそれぞれの「音楽評論とは何か?」のコメントにその答えはあるかもしれません。



『クラーク志織 7人の音楽評論家の肖像展』
〜音楽を言葉にする人々を絵にしました〜 

7名の音楽評論家


青木和富 
今井智子
小沼純一
佐藤英輔
高橋健太郎
松山晋也
増渕 英紀
(50音順/敬称略)

画家クラーク志織が描く 7名の音楽評論家の肖像をそれぞれの「音楽評論とは何か?」の
一言を添えて展示します。

クラーク志織プロフィール
Time Out Tokyo記事
TOKYO WARDROBE記事


期間:2月19日(土)〜 28日(月) 10:00〜18:00
オープニングパーティー 2月19日(土) 18:00〜20:00

19日は12:00〜20:00、20日は16:00〜20:00、この2日間は作家本人も会場におります。
26日、27日はお休みとなります。

入場無料
MAPはこちら

2011/02/08

YAMAHA NS-10Mの時代


本日はYAMAHA NS-10Mについて。
YAMAHA NS-10Mはレコーディング・スタジオで一番有名なモニタースピーカー。(写真は改良型のNS-10M STUDIO)耐入力は50Wしかないのにドライブするパワーアンプの定番AmcronPSA-2の出力は150Wもある。もっと小さいアンプでも十分鳴らせますが、レコーディングエンジニアが求めているのは音の瞬発力。キックがドン、と鳴った時にスピーカーもドンって来ないといけない。車なら軽自動車と排気量の大きな車の加速の違い、アクセルを踏んだときに瞬時に反応してくれるそのフィーリングです。

NS-10Mの周波数特性は60〜20,000Hz、クロスオーバー 2,000Hzなのでちょっとピークのある音を入力したり、一つの帯域で、特に高域をEQしすぎるとツイーターがとんでしまう。このようなセッティングのモニターシステムの使いこなしはとても難しい。NS-10Mをバランスよく大音量で鳴らすには経験とノウハウが必要なのです。このスピーカーを鳴らすことが出来れば一人前です。

当時NS-10Mのスピーカーユニットは消耗品と考えられていて、音がへたればすぐに新品のユニットに交換。だから交換用のユニットのストックは充分にありました。スピーカーユニットを交換すると音のキャラクターが変わる。エイジングをして馴染みを出してからセッションで使用しますが、それでもバックアップ用のNS-10Mが2、3ペアは待機してました。エンジニアも2STの音、6Stの音というようにスタジオごと、モニターシステムの特徴を完璧に熟知していました。この経験を通して「モニターシステムの特徴を理解することこそエンジニアに必要不可欠である」ことを学びました。

NS-10Mの一番の魅力は明るく元気のあるサウンド。ミュージシャンがコントロールルームでプレイバックを聴いたときに盛り上がれる音楽的な音。アーティストがのってくれば良い演奏を録音出来る。アーティストに気持ちよく演奏してもらうことは音楽制作では最も重要です。だからレコーディング・エンジニアは良い演奏を録るためにプレイバック、キューボックスの返しのサウンドにこだわるんです。

「相手が演奏したいタイミングでテレコを回せ」「俺たちは音を録っているのではなく音楽を録っているんだ」「そうすればアシスタントでも音楽制作に参加出来る」「ミュージシャンとテレコで会話しろ」と。マスタリングで、曲間決めをするとき、この言葉を思い出します。NS-10Mのサウンドを通して一流のエンジニアの心を教わりました。
※テレコ:テープレコーダー。SONY-PCM3348、STUDER-A820など。

2011/02/06

すぐにできる音質アップの2つの方法(機材の設置 基礎編)



「ガタ無く置く。ネジをしっかり締める。」
このふたつが機材を設置する際の基本です。
本日は振動対策の基本としてスピーカー、スピーカースタンドのガタ取りとラックマウント機器のネジの増締めについてお話しします。機材は振動対策をしっかり施すとフォーカスがハッキリし、透明感のあるサウンドを再生することができます。その基本はガタが無いようしっかり置くこと。

スピーカー、スピーカースタンドのガタ取りには名刺や単語カードが便利です。まずは手で揺らしてスピーカーとインシュレーター、スピーカースタンドと床にガタが無いか確認します。全くガタがなければ調整は不要です。少しでもガタがあれば隙間に単語カードを挟んでいきます。そのままの厚さ、二つ折り、三つ折りと隙間に合わせて調整します。水平の確認は水準器を使います。水準器はプロ用のものではなく100均のものでも十分です。

アナログEQやコンプなどのアウトボードをラックにマウントする場合は必ずワッシャーをかませてください。そうすることでしっかり固定できます。ネジはしっかり締めたつもりでも時間が経つと緩んでくるので、数ヶ月に一度は増締めをすること。さらにラックマウントのネジの材質によって出音が異なります。傾向としては鉄のネジはガッツのある芯のあるサウンド、ステンレスのネジはレンジが広く高域までキレイに伸びたサウンドです。こちらは上級編のテクニックですが僕は機材に合わせて使い分けます。機材をラックマウントではなく直置きする場合、プロ用の機材はゴム足がついてない機種もあります。そのような機材には四隅に4cm×4cm程の薄いゴムシートを敷いてしっかり置きましょう。

「ガタ無く置く。ネジをしっかり締める。」すぐにできる音質アップの二つの方法、ぜひチャレンジしてください。

PS.2月15日のサイデラ・モーニングセッション#034ではラックマウントしたADコンバーターも徹底視聴しますよ。僕が上記2点や電源などトータルでチューニングしたサウンドを聴きに来てくださいね。詳しくはこちらをご覧ください。

2011/01/21

モニターの特徴が仕上がりを左右する


重要!「モニタースピーカのサウンドの特徴」がTDの仕上がりを左右する例です。
あるエンジニアとモニタースピーカーについて話しました。「ProAcのモニタースピーカーを使っていたけど最近になって以前使用していたYAMAHA NS-10Mに戻した」とのこと。

ProAcのスピーカーはレンジが広くバランスの良いスピーカーです。ボーカルも程よくオケになじんで聴こえます。それに対しNS-10Mは、決してHiFiではなくどちらかというと派手でヴォーカルが大きく聴こえるスピーカーです。彼はなぜNS-10Mに戻したのでしょう?答えは「クライアントさんが、歌を大きくして欲しい、というリクエストが多く、ProAcでミックスするとオケとのバランスが崩れるほどに歌を大ききめにしないと満足してもらえない。NS-10Mで作業していれば聴感上のヴォーカルレベルは大きく聴こえるから。」という事でした。歌のレンジが大きく聴こえるというNS-10Mの特徴を理解してミックスしているので、ボーカル音量はバランスよく録音され問題ないようです。ただし!低音の質感などは慣れる必要がありますね。

僕はマスタリングを始めたばかりの頃、こんな体験をしたことがあります。僕はメガネをかけています。困ったことにメガネの種類によって、レンズの大きさや形によって音の反射が異なり、スピーカーから聴こえる音質が異なるのです。マスタリング後のサウンドがなぜか地味に聴こえたことがありました。機材やケーブルはチェックしても問題なかった。色々、原因を調べました。なんと実際の音色よりも派手に聴こえるメガネだったのです。そのメガネをかけてマスタリングした音を、別のメガネに替えて聴くと地味に聴こえていたのです。そんな重大なことに気がついたきっかけはヘッドフォンでした。スピーカーで聴くと派手なのにヘッドフォンで聴くと地味に聴こえたのです。ヘッドフォンの音はメガネの影響を受けません!まさかこんな身近に原因があったと知った時はビックリ?!しました。これを教訓に、メガネの選定にはファションではなく「裸眼と近い聴こえ方をするもの」を厳選しています。

マスタリング・エンジニアの中には仕事の時は襟付きのシャツやハイネックを着ない方もいます。最高の仕上げをするためには体調なども含め身の回りから自分のリファレンスを作る必要がありますね。もっと重要なのは、体調管理。そして常に平常心。すばらしいミックスに感動しても、常に客観的に。みなさまとの立ち会いマスタリングをいつも楽しみにしています!

2011/01/17

DSDマスタリング(その2)「楽器の太さを表現するローミッドの表現力」


DSDのサウンドの特徴はリアリティーです。特に楽器の太さを表現するローミッドの表現力があります。アコースティックギターのボディーの鳴り、ディストーションギターのアンプの箱鳴り、ヴォーカルの胸の響き。音と音の隙間が響きでつながるので暖かみのある音を作ることが出来ます。

先日、リマスタリングさせていただいたあるアーティストさん。リクエストは「ギブソンのアコースティックギターの低域、中低域を出して音を太く仕上げて欲しい、でも全体の抜けはオリジナルの雰囲気をキープしたい。」

真っ先に思いついたセッティングはKORG MR-2000Sとアレグロケーブルの組み合わせです。素材は48kHz、24BitのWAVファイルだったので2.8MHzのDSDデータにアップコンバートしました。5.6MHzより2.8MHzを採用したのは音像の大きさ、太さを表現するためです。

ラインケーブルはアナログ感もプラスしたかったのでMR-2000SからPrismSound ADA8(AD/DAコンバーター)はアクロテック8Nでつなぎました。最初はアナログコンプPrismSound MLA-2を通しましたがTD音源が十分太かったので最終的には外しました。音の抜けはADA8の電源をAudioPrism Power Foundation 1Aの電源BOXからとりました。この電源BOXはノイズフィルターを内蔵しているためとてもクリーンなサウンドです。

DSDのサウンドのもう一つの特徴は(毎回しつこいようですが)『音像が大きく立ち上がりが速い』ことです。ハイはEQしなくても抜け、コンプのアタックタイムを遅く出来るのでファットなドラムサウンドを作ることが出来ます。ただし、ローエンドの処理はとてもシビアです。1Hzの違いが音に影響するので良いモニター環境が絶対的に必要です。

サウンドはとても気に入って頂けました。プレイバックした瞬間に「この音が欲しかったんです」と言われた時は嬉しかったですね。僕もMR-2000Sを使い始めた当初はガッツのある音を出すためかなり試行錯誤しましたが今ではPCM、DSD5.6MHz、DSD2.8MHzとジャンルやアーティストの好みに合わせて使い分けています。プレイバックで最高の音質を引き出すことがマスタリングでは一番大切だと思います。

2011/01/12

音作りの3ステップ


本日はプラグインでも簡単に出来る、音作りの3つのステップについて。

1)音のキャラクター決め。
2)バランス調整。
3)個々の楽器の音作り。
1)マスタリングで一番大切なことはTD音源のクオリティーを100%引き出すことだと思っています。そのためEQなどを施す前に、楽曲やジャンルに合った機材、ケーブルの選択を最初に行います。目的は機材、ケーブルのもつサウンドキャラクターを積極的に音作りに反映するため。もう一つは聴き比べの過程でアーティストの好み、音の方向性を理解するためです。
※プラグインで作業する場合、最初に楽曲に合ったプラグインを選択します。

2)次にバランスの確認をします。問題なければそのままでOK。例えば低域が少し多い場合はマルチバンドコンプでバランスを整えます。(この作業ではコンプは使わず、あくまでレベル調整のみを行います)クロスオーバーは60Hz〜160Hzあたり。ほんの少しレベルを下げると音の抜けが良くなるはずです。また、メーターは触れているけど聴感上の音圧感が無いときも低域が多すぎるので少し下げましょう。

3)そして最後に個々の楽器の音作りを行います。1)、2)で仕込みが出来ていれば音作りはとても簡単になります。マスタリングではトータルでEQを施すので必要なポイントのみを正確にブースト、カットする必要があります。例えばボーカルなら声の量感、芯、倍音、艶と分けて考えます。

<ボーカルの基本EQ>
声の量感:600Hz〜800Hzをブースト
声の芯:1.0kHzから1.5kHzをブースト
倍音:12kHz〜16kHzをブースト、10kHzからシェルビングでブースト
艶:2kHz〜3.0kHzをブースト
子音が強い:6kHz〜12kHzをカット

男性ヴォーカル、女性ヴォーカル、ジャンルによって処理は異なりますが大切なことは必要な帯域のみをEQすることです。オリジナル音源と比較しながら行うことをおすすめします。

機材、バランス、ヴォーカルの音作りを同時に判断するのはなかなか難しいですよね。上記のように音作りの過程を分けると、いま行っている音作りを集中して聴くことが出来ますよ。


2011/01/11

ローエンドの処理


本日は難関、ローエンドの処理について。

低域は「多くても心地よい音」と「多すぎると音楽のバランスを崩してしまう音」があります。ローエンドの処理はマスタリングのキーポイントの一つです。音圧、音量、レンジ、バランスなどはこの帯域の扱い方で全く変わって聴こえます。

確認にPC用スピーカーなど口径の小さなスピーカーで聴いてみることは一つの手段です。スタジオモニターと聴き比べてどのような音の変化があるか、じっくり聴き比べて下さい。国内外を問わず良い作品はあらゆるシステムでバランスよく再生されますね。ここに音作りのヒントが隠されています。というのもローエンドには実音よりも楽器の響き、部屋の響きなど広がり、空気感を表現する音が存在するのです。

マスタリングで役立つローエンド処理の効果的な方法を説明します。
1)キックの音が次の音符にかぶってビート感が出ないとき、低い帯域から徐々にローカットしていくと良い感じで音が止まるポイントが見つかる。

2)J-POPやロックで低域が多すぎて中域のギターやヴォーカルが聴こえにくい場合、ローカットをすると厚みが増し音が前に出るようになる。

3)メーターの振れより音圧感がないときは低域を確認。低い帯域から徐々にローカットしていくと透明感のある音からマットな厚みのある音に変化していく。抜けが悪くならない一歩手前がスイートスポット。
低域の処理(その2)「ローカット」
低域の処理(その3)「超低域の確認」

4)96kHz/24Bitのマスター音源を48kHz/24Bitのようなニュアンスを表現したいときにも効果的です。
ハイパスフィルターでシビアに調整する

最初は20Hz〜30Hz辺でローカットしてみて下さい。1Hz変わるだけで音のニュアンスは変わります。周波数だけでなくカーブのパターンも3dB/Oct、6dB/Oct、12dB/Oct、ベッセルカーブなど切り替えることで様々な表現が可能になりますよ。


2011/01/10

モニタースピーカーの定期点検


年末年始に作業を休まれていた方も多いかと思うので、本日はモニタースピーカーの定期点検についてです。
点検箇所は以下の3点。
1)スピーカーの角度
2)スピーカーユニットのネジ
3)スピーカーケーブルのクリーニング

1)スピーカーの角度はリファレンスCDを再生して確認します。定位、フォーカス、バランスを確認し気になれば微調整しています。特にスピーカーをインシュレーターに乗せている場合は角度がずれやすいので注意してください。2週間に1度、またはレコーディングやTDなどのセッションが始まる前に調整すればバランスの良いサウンドをキープ出来ます。

2)スピーカーユニットのネジが緩んでくると音がぼやけてきます。締めると輪郭がはっきりしたサウンドが戻ってきます。締め方は、順序は一筆書きで星を描くように。一度に締めるのではなく全体的に少しずつ増締めして行きます。こちらは1ヶ月に一度チェックすれば十分です。

3)パワードスピーカーの場合は入力のキャノン、TRSまたはRCA端子とラインケーブルのコネクターを無水エタノール、綿棒でクリーニングしてください。音の透明感が戻ってきます。3ヶ月ごとのクリーニングが目安です。パッシブスピーカーを使用している方はプラス、マイナスのスピーカーケーブルの被服が酸化していたら新しく剥き直して下さい。(U字プラグが付いている場合はプラグをクリーニングします。)酸化してくると導体が青みがかった黒ずんだ色をしてきます。スピーカーの端子は無水エタノール、綿棒でクリーニングしてください。

P.S.
スピーカーケーブルの抜き差しが頻繁な方はケーブルの頭をハンダメッキして下さい。導体がほつれにくくなります。このとき導体全体をハンダしてしまうと音質が変わるのでケーブルの頭のみハンダするのがポイントです。

モニター改善策(その2)「スピーカーユニットのネジ締め」
キャノンケーブル磨き