2011/02/18

DSDマスタリング(その3)「歪みの少ない透明感のある声、槇原敬之/林檎の花」


JR東日本東北新幹線の新青森駅開業のCMですでにみなさんお馴染みの、槇原敬之さんニューシングル「林檎の花」のTD音源はKORG MR-2000Sで録音された5.6MHzDSDデータでした。最近はWAVなどのPCMデータをKORG AudioGateでDSDデータにアップコンバートして作業する「DSDマスタリング」の手法を多くとっていますが、やはりDSDレコーダーにダイレクトにTDされたサウンドは違う!優しく暖かみがあり抜けてくるヴォーカル。エンジニアTさんに質問したところ、
「MR-2000SにTDするようになってから、EQをほとんど使わなくなりました。PCMに落とす時は声の抜けを良くしたり、輪郭をつけるためのEQをかけていましたが、DSDは高域をEQしなくても抜けるのでどんどんシンプルな処理になっています。」
「音の透明感が違うのでリバーブのかけ具合も変わりました。」
とのこと!PCMの場合DAW上でのバウンスやマスターレコーダーへのハイサンプリング録音でも音質が若干変化しますが、MR-2000Sに録音すると録音前と後で音のニュアンスがほとんど変わりません。MR-2000Sのインプットスルーを聴きながらTD作業をすればエンジニアのイメージしたサウンドに限りなく近く仕上げることが可能。これがDSDが他のフォーマットに比べより音楽的に仕上がる要因のひとつです。

今作のDSDマスタリングではEQ、COMPを施す前に音の土台作りをしっかり行ないました。まずエンジニアTさんがTD時に聴いていたサウンドを再現するために録音に使用したワードクロックROSENDAHL Nanoclocksを再生時にも使用し、これにより低域の厚み、高域のレンジが増しピラミッド型のバランスの良いサウンドになりました。さらに声の輪郭、存在感を出すためにアレグロの電源ケーブルを使用。(DSDマスタリング(その1)「透明感のあるアナログサウンド」を参照)このケーブルを使うと音像が大きくヴォーカル、キック、スネアなどモノの楽器が前に出て来ます。

EQは補正程度に。ヴォーカルの芯を出すために1kHzを1.4dBプラスしました。まさに「高域をEQしなくて済む」のでより歪みの少ないクリアーで透明感のある声に仕上げられます。COMPはレシオ1.6:1、アタックタイム50ms、リリースタイム300msでごく浅くかけました。アタックタイムを遅めにしてヴォーカルではなくキックに反応させリズムをタイトに仕上げています。

サウンドは2011年3月11日(金)発売のCDで、ぜひ確認してみて下さい。

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