2011/03/03

DSDマスタリング(その5)「DSDマスタリング、ヴォーカルとローエンドのEQ」



「DSDとPCMでEQは違いますか?」という質問を頂きますがもちろん違います。DSDのサウンドはスピード感があるためハイをEQしなくても十分に抜けが良い。ジャズやクラッシック等の生演奏音は柔らかいのにフワッと抜けてきますね。「柔らかいのに抜ける音」をDSDマスタリングでつくることが出来ます。

まず初めに注意をひとつ。DSDのサウンドはローエンドの伸びとハイエンドの伸びがPCMとは違います。DSDでのEQは50Hz以下、10kHz以上のレンジをほんのわずかEQしただけで音質が変化します。つまりローからハイまでバランスの良いモニター環境が不可欠です。

EQで特に難しいのがヴォーカルとローエンドの音作りです。僕はヴォーカルを響き、芯、倍音に分けて考えますが、自分がイメージしたサウンドを得るためにはみなさんが想像する帯域よりも低い帯域をコントロールすることが多いです。ヴォーカルの芯は1kHz前後、響きは500Hz前後、倍音は16kHz前後の帯域を調整します。倍音のEQは0.2dB程度プラスするかあるいは全くしない場合もあります。

また、DSDのローエンドは非常に豊かなヴォリューム感があります。そのまま再生するとローが多すぎる時はマルチバンド・コンプで帯域を分け少し下げてから作業します。クロスオーバーは50Hz〜160Hz。ローエンドは何もしない状態が一番透明感がありますが、まとまりを良くしたり、音圧を出したい時はローカットします。透明感を出すなら25Hz、まとまり重視なら27Hz前後からカット。どこからカットするかはキックとベースのバランスを確認します。

DSDのサウンドはほんの少しのEQで音が大きく変化します。EQを大きく動かさなくても音色をコントロール出来るから音楽のバランスが崩れません。何度言いますがDSDの音作りで一番大切なのは分かりやすいモニター環境です。分かりやすいモニター環境なら安心して最後のファイナルタッチを加えることができます。「ケーブルの違い、機材の違い、0.1dBの違いってこんなにちがうの」ということはぜひ立ち会いマスタリングで体験して下さい!


0 件のコメント:

コメントを投稿