2013/09/30

業界への新提案(その1)合言葉は「無響室!!!」

無響室とは、読んで字の如く、
無響室(むきょうしつ、anechoic chamber)とは、残響が非常に少ない特別な実験室である。工業製品や家電製品の動作音測定や音響機器開発などに用いられる。残響時間は、ほぼ0になる。そのため、周囲の音の反射具合に影響されずに、被測定物の発生または検出する音だけを忠実に測定できる。たとえばスピーカーの周波数特性、マイクロホンの指向性など。(Wikipediaより引用)
とあります。

サイデラ・マスタリングではエンジニアなどを志す若者に向けて、インターンシップスタジオ見学を積極的に受け入れています。熱意をもって業界の門を叩いてくるわけなのですが、殆どの人達に共通することは「緊張しいで声が小さい」こと。これが(本来当たり前のことなのですが)意外とできない。気を抜くとすぐに3dB下げのマイナートーンになっています。ちょっとちょっと、そんな送りバントみたいな発声じゃ響かへんで。6dB上げの長三度上げでしょ!

そこで本日は新たな業界用語として新提案!
・「声が小さいな」「暗いな」と思ったら、大きく指さして「無響室!!!」と声をかける
のをサイデラ・マスタリングのルールとしました!「声小さい!」などと日に何度も言われるとよけいに縮こまってしまうのでそれでは意味が無いし、ゲームのように楽しむことも狙いです。

学生さんや若い皆さん、「無響室」になっていませんか?合言葉は「無響室!!!」ぜひ流行らせましょ。


2013/09/25

夢でよかった



「三つ子の魂百まで」――私の録音の原点は、幼少期の “ラジカセ遊び” にあったのではないかと思います。そして吹奏楽に夢中だった学生時代には演奏を録音し部員に配布、それが喜ばれたことも影響しているのでしょう。今になっても変わらぬことを続けているわけですが、その動機も似たようなものです。

「ライブを体験できなかった人にも聴いて欲しい!」

「唯一無二のものを後世に遺し・伝えたい!」

……こんな夢を抱いて録音に勤しんでいるわけですが、録音が “仕事” であるがゆえに、また違った夢をみるようにもなりました。

「レコーダー(録音機)が動作していなかった! ボタン、押した……っけ?」

「録音できる残り時間が5分しかない! 開演したばかりなのに……」

「音が来ない! ケーブルが繋がっていないぞ!」

「開演5分前なのに、準備が終わらない!」

「扉が閉まってケーブルが切れた!」

「似た名前の、違うホールに来てしまった!」


…ハッ。汗だくで目覚め、夢でよかったと安堵し、事故のないようにと心を新たにするのであります。


みなさんは、どんな夢をもって仕事をしていますか?
そして、職業柄、どんな夢をみますか?


2013/09/19

私たちのインターン日記2013(その3)「初めての機材聴き比べ」



インターンシップのルーティン・ワークに「DATのデジタルアーカイビング」があります。S/PDIF接続して、DATデッキのTASCAM DA-45HRで再生してKORG MR-2000SにWAVデータとしてデジタルコピーしていきます。テープメディアを正しく再生して、正しいフォーマットで録る。デジタル録音の基礎に触れています。そうしたらね、気づいたんですよ。この2台のヘッドホンアウト、音質が全然ちゃう。なのでインターン3人それぞれが2台の音質の違いをレビューしました。音の印象を文字にするなんて、初めてかも。

使用機材:
KORG MR-2000S(HDDレコーダー)
http://www.korg.co.jp/Product/DRS/MR-2000S/
TASCAM DA-45HR(DATデッキ)
http://tascam.com/product/da-45hr/overview/
SONY MDR-CD900(ヘッドホン)
http://www.smci.jp/headphones/cd900st/index.html


まずKORG MR-2000Sを聴いてからの感想。
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インターンA:
MR-2000Sは優等生の演説のように正確で的確な返答をし、欲しい情報を全て返答してくる感じな印象です。耳には優しいが、奇麗すぎて演説のジャンルによっては少し物足りなく感じる時も。空間の隅々まで聴こえ耳に痛くない繊細な音。

インターンB:
明るい音になると感じます。音質は高域が強く、正直耳につきます。分解能もDA-45に比べると粗いという印象を受けました。また、一つの音が目立ってしまい他の音をつぶしている感覚があります。

インターンC:
DA-45HRよりも高周波数の音が含まれているという印象を受けた。例えば、金管楽器の音が、より明るく聴こえた。また、生音に近いリズムギターの音や指を鳴らす音も、よりスコーンと前に出てくる印象を受けた。他の特徴として、リバーブ(空気感?)も含み、そのリバーブ効果故か、音全体が若干浮いた感じに聴こえた。
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おー、機器を人に例えているのはおもろいやん!人それぞれに個性があるように、機器にもそれぞれに個性が出るというのを暗示している気がするなー。そしてBCの二人は、高域に反応してる!個人により着目点が微妙に変わってきますね。

さあ続いて、TASCAM DA-45HRを聴いた感想はいかに??
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インターンA:
こちらは優等生のMR-2000Sとは違い、癖のある答えを返してくる。変人学者といったところでしょうか。欲しい情報は入っているが多少パンチのある返答をしてくるので耳も多少疲れる。繊細さは欠けるがパンチがある音。

インターンB:
音の分解能が高くどの音も忠実に再現できていると感じます。さらに音像が見え空間の広がりを感じる事ができ、一つ一つの楽器がしっかりと聴こえました。

インターンC:
全体の音がより締まっているように聴こえた。元々の音源に対する脚色があまりなく、音が自然に聴こえるという印象だった。金管の音も固めだと感じた。別の特徴として、ボリュームのつまみを同じ具合に回しても、音量の変化がDA-45HRの方が著しい。
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むむ!?ABの二人の感覚に大きな差があるけど。Aはパンチがあるという見解やけど、Bはどの音も忠実に再現できていると表現しとる。逆に、BCはどちらも、忠実に再現している(脚色があまりない)という風に評価しとるやん。ちなみにAは他の2人よりもオーディオの経験が長いんやけど、それも関係しとるんかな…。

こんなに着目点も感覚も違う3人がもし全員エンジニアになったとしたら、それぞれ3人の音の解釈を持ち寄って、音を扱っていくんやろうな、お客さんに応えていくんやろうなと思うとなんか不思議な気持ちになった。エンジニアってだいたい皆同じ感性を持っとるもんやと思っとったから。機器間の音の表現の違いも理解し、あと個人での感覚で音の解釈の違いもすごく変わっていく事実を頭において、これからも学んでいきたいな!


2013/09/18

下駄を履かずに

スタジオのような恵まれた環境と違い、ライブレコーディングは「電源の確保」から始まります。音響専用電源を用意くださるホールも多いのですが、一般的な “コンセント” から電源をとらなければならないことも多々あります。

ところが、業務用機器につきものの「アース付き(2極接地極付き)プラグ」は “棒” が一本多いばかりに、家庭用コンセント(2極コンセント)に差し込めないのです。

そこで、通称「ゲタ」(下駄みたいでしょ?)を準備しているのですが、これを忘れてしまった場合……困ってしまいますよね。特に、数が必要な場合はお手上げです。

そこで! とっておきの裏ワザをご紹介。

♪ 平型トリプルタップぅ~!


平型トリプルタップなら、アース付きプラグを3つ差し込むことができるのです。電源タップとして省スペースなので荷物を減らしたい時はもちろん、入手も簡単なのでイザという時に便利ですよ!

2013/09/17

Switch Craft 3502AAU(その1)

本日はプロ用のRCAコネクターSwitch Craft 3502AAUについてお話しします。

Switch Craft 3502AAUはホームオーディオ用より、むしろプロの現場、クラブのDJブース周りやレコーディングスタジオなどでとても信頼の高いコネクターです。コンパクトな作りながら信号伝送においてノイズの入りにくい構造。真鍮の強靭なシェルは音質的にとても優れています。

プロ用のコネクターとして重要なことは本番中に「簡単にはずれない信頼」。そのためSwitch Craft社のプラグは一般的なRCAコネクターより噛み合わせが硬くなっています。力任せに押し込むと端子側を破損する恐れがあります。注意しながら接続して下さい。

PS.
本番中に「簡単にはずれない信頼」は電源プラグにも重要です。レコーディング中に外れたりしたときにはシャレにもなりません。電源プラグ(インレットプラグ)がゆるゆる時の応急処置を。写真のように細いドラテ(ドラフティングテープ)で応急対策が出来ます。プラグの遊びが無くなるようプラグの頭に2巻きほど巻きます。1週間ほどのセッションならそのままいいとして、ずっとドラテを貼ったままだと熱で粘着質がベタベタしてきます。セッション終了後は剥がして無水エタノールでクリーニングして下さい。(長期的に使用する場所には、最初からぴったりサイズのコネクタを探すことが大事です。)

2013/09/11

手で切れる



仕事に欠かせない道具のひとつに、ビニルテープがあります。ケーブルをマイクスタンド等に固定したりと様々な場面で多用するのでハサミ/カッターを使う手間も惜しく、手で切ることがほとんどです。

とはいえ紙テープの様には切れず若干のコツが要るのですが、慣れていても時々切り損ねる場合があります。

そこでオススメしたいのが、ダイソーのビニルテープ。
素材が薄いのでしょうか、手でも切りやすいのです。




2013/09/09

Q&A(その7)「配信用マスタリング」と「CD用マスタリング」では何が違いますか?

Q&A(その7)「配信用マスタリング」と「CD用マスタリング」では何が違いますか?

マスタリングの目的の一つは「いろいろなメディアやシステムで聴いても伝わるサウンドにすること」です。CD用マスタリングを施した音源をそのまま配信用の音源に使用していただいても仕上がりのイメージが出来るだけ変化しないように考慮した音作りを心がけています。

サイデラ・マスタリングは「Mastered for iTunes」に対応したマスタリングスタジオです。CDマスターより解像度の高い「Mastered for iTunes」用マスターの作成も推奨しています。また24ビットデータやDSDデータをそのまま非圧縮で配信できる「高音質配信」用マスタリングもぜひ体験しにきてください。スタジオのマスターの音をそのまま届けられる時代がようやくやってきました。

関連リンク:
「音質の行方 vol.1」オノセイゲン、ロング・インタビュー
Saidera Mastering Blog:高音質音楽配信サイト(その1)「e-onkyo music」
Saidera Mastering Blog:高音質音楽配信サイト(その2)「OTOTOY」


2013/09/06

音像とは(その3)「核となるサウンドを引き出す」


マスタリングで音像の大きなサウンドを作るにはどうすれば良いのか?それは「ミックスマスターをよく聴き、曲の中で核となるサウンドを引き出すこと」です。

なぜ「核となるサウンド」に絞って引き出すのかというと、すべての楽器を大きくしようとEQで強調すればすぐにデジタル音声の最大値(=0dBFS、デジタルフルスケール。)に達してしまうからです。その結果全体のレベルを下げることになり個々の音像は大きくなりません。(さらにここできついリミッティングをしては本末転倒です。)

例えば高域が少し強いミックスで、リズムを強調して欲しいとリクエストがあった場合。高域をシェルビングで緩やかに落とすのが効果的です。シンバルやハイハットのピークを押さえることで中低域が充実し、キック、スネア、ベースの音像の大きさとグルーブを引き出します。そして高域のピークが押さえられた分音量ももう少し入れることも可能になります。

次回は「音数が多い曲」「音数が少ない曲」の音像についてです。

2013/09/05

サイトウ・キネン・フェスティバル松本 スクリーンコンサート2013に行ってきました

どうもMushです!

現在開催真っ只中の「サイトウ・キネン・フェスティバル松本」でのサイトウ・キネン・オーケストラの演奏を、ライブ中継で楽しめる素晴らしいイベント「小澤征爾総監督 サイトウ・キネン・フェスティバル松本 スクリーンコンサート2013」に行ってきました。六本木ヒルズアリーナに設置されたハイビジョンスクリーンと5.1chサラウンド音響とでリラックスして最高の演奏を楽しむことができます。

アリーナ中央には座席もいくらか用意されているのですが、今年のお気に入り視聴スポットは「Rsスピーカーうしろの階段の途中」!サラウンド音響で再現される松本市からの「ホールの響き」と会場の「六本木ヒルズアリーナの響き」のバランスが一番気持ちよく感じられる場所でした。ビル風もまた心地いい。


また今回サイトウ・キネン・フェイスティバル展も同時開催。写真展や物産展が楽しめました。その一角にはECLIPSE TD712z MK2のサラウンドで中継を楽しめるコーナーも!テレビ朝日の中継スタッフのみなさん、現地松本市のみなさん、今年もありがとうございました!





関連リンク:
サイトウ・キネン・フェスティバル松本
小澤征爾総監督 サイトウ・キネン・フェスティバル松本 スクリーンコンサート2013
松本ノオミヤゲ

2013/09/03

音像とは(その2)「音像の大きさと音量の大きさは違う」


本日は「音像の大きさ」と「音量の大きさ」の違いについて。

「音像の大きさ」とは=スピーカーやヘッドフォンから聴こえる歌や楽器の輪郭の大きさ
「音量の大きさ」とは=耳で聴いた時の音量そのものの大きさ
です。この二つはそれぞれが関係性を持ちながらも同じではありません。大切なのは「音量の大きな作品に仕上げたいと思ったら音像を大きく仕上げること」です。

試しにミックスマスターにマキシマイザーを使用して音量をぐっと上げてみましょう。音量は上がりますが音像の大きさはどうでしょう?音像の大きさは変わらず、アタック(音の芯)が潰れて詰まって聴こえます。今度は音像を大きくするEQ処理を施すと、(このテクニックについてはまた今度!)音像だけでなく聴感上の音量感も大きくなります。輪郭が大きな音は聴感上の音量も大きく聴こえるのです。

次回は音像の大きなサウンドを作るには実際にどうするのか?です。


2013/09/02

高音質音楽配信サイト(その2)「OTOTOY」

「高音質配信」を行なうウェブサイトを国内外含め紹介する連載(その2)は"OTOTOY"です。
http://ototoy.jp/music/

OTOTOY(オトトイ)は日本の高音質音楽配信サイトで、配信フォーマットはMP3、16-24ビット/44.1kHz-48kHz(WAV)、1ビット/2.8MHz-5.6MHz(DSD)での配信を行っています(2013年8月現在)。24ビットのWAV配信はOTOTOY独自にHQD(High Quality Distribution)と名付けれられています。ごぞんじ「サンレコ・レーベル」のDSD配信もここOTOTOYだけで購入することができます。

ジャンルの仕分けは特に無し。ごった煮!という感じのサイトは
「様々な属性の音楽ライターやアーティスト自身が関わり、リアルなミュージック・シーンをお伝えします。」
という言葉をそのままに表しているようです。Apple iPhoneユーザーの方は「OTOTOYアプリ」
でも購入済み楽曲をストリーミング再生で楽しめます。

DSD配信のカタログの一部

独自のインタビューや企画音源がとても多く、OTOTOY自体がひとつのレーベルのような存在です。Ustream番組「TV♭」セミナー「オトトイの学校」も主催しいつも新しいコンテンツを提供してくれています。「音質の行方 vol.1」というインタービューにはオノ セイゲンが録音の歴史からDSD配信まで幅広く語っています。

ちなみにOTOTOYで配信中の「Bar del Mattatoio/Seigen Ono」「Seigen Ono Ensemble Montreux 93/94/Seigen Ono Ensemble」、DSDと24ビット/48kHz WAVはオノ セイゲンによる最新のDSDマスタリングバージョンで16ビット/44.1kHz WAVバージョンはSterling Sound(NY)のグレッグ・カルビ、テッド・ジェンセンによる94年マスタリングバージョンです。