10月15日に、audio-technica主催「第8回 めざせ音匠 マイク指南塾」にいってきました。無料で受けられて、しかもプロの講師の方からアドバイスを頂けるという事で非常に太っ腹な企画です。行われた場所は株式会社オーディオテクニカのアストロスタジオです。メインコンソールはAMEK media5.1/60chでモニタースピーカーはGENELECの1038とYAMAHAのNS-10Mです。
http://www.noe.co.jp/technology/18/18std2.html
講師はマイスターミュージックの平井義也さんです。この方はなんとドイツの国家資格「トーンマイスター」を日本人で初めて取得された人なんです!トーンマイスターとは「録音の現場において、それぞれの作曲家の音楽が要求する音色を的確に捉え、演奏家がその持ち味を最大限に発揮するために何をしたらよいのかをトータルに判断する唯一の存在」だそうです。今回レコーディング対象となったのはチェロで、アーティストは越川和音さんという方で様々な大会で優秀な成績を収めている方です。
http://www.audio-technica.co.jp/proaudio/seminar/index2.html
始めにマイクの講座として指向性についての説明があった後で、チェロについての説明がありました。普段弦楽器の生音を聞く機会があまりないので聞く場所によって全然聴こえる周波数帯が違う事におどろきました。案外チェロの低域成分は後ろから出ているんですが、それを反響板を用いてリフレクションさせています。最初に言われた事は「自分が作りたい音のイメージをきちんと持つ事」です。これはどんなレコーディング、ミックス、マスタリングの現場でも言える事だと思います。自分の指標を決めておかないとゴールが見えないですしね。
早速二人一組になって順番に作業スタート。自分は同じくサイデラ・マスタリングにインターンに来ている千田君とペアになっていたのでお互いの意見を伝えてマイクを選びました。使用したマイクはAT5040、AT4080、AT4060×2、CMC6U×2の計6本です。マイクの説明をするとAT5040がオーディオテクニカの最新の単一指向性コンデンサーマイクで4つもダイヤフラムがあり広いダイナミックレンジがあります。AT4080は双指向性のリボンマイクで、リボンマイクならではの暖かみのある音色です。T4060は真空管のコンデンサーマイクでナチュラルな音質が特徴です。CMC6UはSCHOEPSのマイクで使った事がないので無指向性にしてアンビエンスとして使いました。
まずAT5040をチェロの50cmぐらい離れた所に置き、AT4080を3mぐらい離したチェロの真正面に置きました。高さは大体2mぐらいです。AT4060はAT4080から50cmずつぐらい離し、ステレオ効果を狙っていきます。CMC6Uはアンビエンスなのでチェロから6mぐらい離して高さ3mぐらいにセット。アンビエンス以外は全てその場で音を聴いて自分が良いと思った位置にたてました。Ustream動画もであるので是非ご覧ください。
http://www.ustream.tv/recorded/39860381
早速モニタールームでチェック。全体の音量バランスを整えていき、マイクを微調整しながら音を作っていきました。響きが足りないと思ったのでアンビエンスのマイクの高さを変えたり、リバーブを足したりしながら自分達では納得のいく音になったと思いましたが、総評では越川さんに「生っぽさ」が今日録音した曲には合っていない感じだったそうです。平井さんには低域の位相が合っていない感じがしてモワッとしたと言われました。何がいけなかったかというとマイクとの距離とオンマイクとオフマイクとのミックスバランスが重要だったそうです。最後に平井さんに言われた事は「このマイキングで何十分も聴いていられるかどうか」です。「お客さんが飽きてしまう様な物では意味がない」と付け加えられて、たしかに客観的に見てどうなのかという事も考えなきゃなと思いました。
この講座は学校の授業と比べ物にならないくらいの充実した内容で、とても勉強になりました。初めてのチェロのレコーディングでどんなマイク、どのようなセッティング、どのようなマルチマイクでのミックスバランスが良いのかも分からなかったので耳探りでがんばりました。これら全てが解っていて最善のセッティングを短時間でやり遂げてしまうレコーディングエンジニアは改めてすごいとおもいました。それでいてコミュニケーションやアーティストへの気遣いなどができるエンジニアこそが「プロ」のレコーディングエンジニアになるのでしょうね。道のりは厳しい。。。。また機会があればぜひ参加したいです!
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