2014/11/06

サイトウ・キネン・フェスティバル松本/レコーディング舞台裏(その2)

前回からサイトウ・キネン・フェスティバル松本のレコーディング舞台裏についてご紹介しています。

(その1)はこちら→http://saideramastering.blogspot.jp/2014/10/blog-post_14.html

サイトウ・キネンの大きな魅力のひとつは、いわゆる常設のオーケストラとは違って、フェスティバルのためだけに一流の演奏家が世界各国から一堂に会すること。本番はもちろんですが、リハーサルにも独特の雰囲気があります。世界最高峰のメンバーが集まるだけあって、普段は一緒に演奏していないにもかかわらずリハーサル一発目から素晴らしい演奏! このリハーサルも可能な限り記録として録音するわけですが、本番に向けて高みを目指す音楽家の中には

「今のリハーサルの録音、CDで欲しい!」

とおっしゃる方も。録音チームも心得ていて、複数のマイクロフォンを使用するマルチ・マイクのやり方であってもリアルタイムでCDにダイレクトミックス(いわゆる “一発録り” )しているので、リハーサル終了後すぐに音源をお渡しすることができるのです。

この一発録り、特にリハーサルはテスト録音もできないので「ぶっつけ本番」。そんな状況でも即座にCDにまとめ上げる録音技術は、豊富な経験あってのもの。前回ご紹介した「エヌ・アンド・エフ」のバランス・エンジニア福井氏はクラシック一発録りの名手で、私の録音技術も氏から大いに影響を受けています。そして何より、素晴らしい生の演奏と、その録音の結果を即座に現場で聴き比べられるので、私の耳のバランス感覚は、サイトウ・キネンに育てられたといっても過言ではありません。

また、マルチ・トラックで個々の音を「収録」するのではなく、生き生きとした演奏をリアルタイムでまとめあげCDに閉じ込めることによって、脈々と続くサイトウ・キネンという舞台で繰り広げられる珠玉の演奏の数々を「歴史」として残すことができるのもレコーディングの醍醐味ですね!


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