2016/05/06

サウンド・エシックス これからの「音楽文化論」入門

どうも久保です!みなさんはどのようにGWをお過ごしでしょうか。
私はいろいろと音や音楽についての本を読んでいます。今回はこちらです。



サウンド・エシックス これからの「音楽文化論」入門
小沼純一 著

実はサイデラ・マスタリングのインターンシップ応募の推薦書籍にもなっているこの本。初版が2000年なので少し古く、タイトルにある「これから」の時代にはすでに入っているかもしれませんね 。「サウンド・エシックス」とは訳すと「音楽の倫理」。270ページほどの新書サイズの本ですが、この本は「私たちはどんなものを「音楽」と呼んでいるか」というすごく根本的な部分から問いからはじまります。

音楽とは何か。この定義の変遷を本では中世ヨーロッパまでさかのぼります。音楽を音が美的に組み立てられた「作品」としてとらえていた考え方が、20世紀以降、ジョン・ケージの「4分33秒」や、環境音も音楽の一部とするサウンドスケープの思想によって、「音楽とは何か」をそのままでは定義できない現状になってゆくことが論じられます。

また、音楽そのものだけではなく、この本では音楽が生まれる「場所」についても言及されます。「音楽とは何か」から「音楽と「場」」について、そして「作品」という概念について、音楽の営みの中で普段意識していない部分がうかびあがります。

説明がわかりやすく、ヨーロッパ音楽の思想から現代(といっても2000年なので少し古い)の音楽メディアまでかなり広い範囲について言及しているので、学問に近い本を普段読まない音楽制作者の方やアーティストの方にも読みやすい一冊です。

音というかたちで表せない存在と、それを取り囲む文化をどう言葉でとらえるか。これは何百年も人は挑戦しつづけている永遠のテーマです。音と音楽を言葉の世界からも見つめると、新たな発見や驚きがあるかもしれません。

それではよいGWを!

++
目次

イントロダクション
たかが音楽、されど音楽/音楽への新しいアプローチを求めて

第1章 音楽の輪郭/へり
 私たちはどんなものを「音楽」と呼んでいるか  ただの音から音の組み立てへ  
 数・秩序・ノイズ  文脈によって音楽は変わる  これが音楽か?――サンプリングとジョン・ケージ
 「音という環境」――マリー=シェーファー  「全感覚的なるもの」――マーシャル・マクルーハン
 ワールド・ミュージック、民族音楽  着メロは音楽か?  音楽は聴き手に委ねられている  
 複数の音楽を肯定せよ
 【注および作品ガイド】

第2章 音楽と「場」(1)――メディアあるいは「いつでも‐どこでも」
 あなたがCDを買うと……  時間と音楽/「ひと」と「いま‐ここ」
 テクノロジーによる音楽体験  MP3以後のヴィジョン  時間・空間性の喪失
 音楽と場所  音楽と映画  音楽とメディア  楽譜というメディア  
 「いま‐ここ」から「いつでも‐どこでも」へ  
 【注および作品ガイド】

第3章 音楽と「場」(2)――「いま‐ここ」あるいはノイズ
 音楽を聞く〈あなた〉に起こっていること  音楽の生活化――「よそ」への通路  
 「一回かぎり」への関心  再現と即興  「持ち運べる音楽」と「持ち運べない音楽」
 ノイズを排除する近代ヨーロッパ  「都市」の音楽――スティーヴ・ライヒ
 シリアス/ポップの軸  野村誠の「そのとき‐その場」の試み  音楽の「場」
 【注および作品ガイド】

第4章「作品」を疑う
 音の効果  「音楽だ」と判断する基準  
 「曲=作品」とは何か?  「西欧近代芸術音楽」における作曲  
 楽譜・演奏家・聴き手  「思念の道の音楽」と「あらかじめ準備された音楽」  
 日本の音楽?  近代化と作品  作品の「はじまり」と「おわり」  
 極大と極小――M・フェルドマンと口元からもれるハミング
 【注および作品ガイド】

第5章 誰から誰へ?――音楽の署名/宛先
 ポピュラー・ソング、民謡、スタンダード・ナンバー
 芸能、そして匿名性  音楽の融合――ルー・ハリソン  ハイブリッド、移動  
 引用とサンプリング  路上の歌とコンサートの演奏  
 内なる音楽  儀式・賛美歌・シャーマニズム  
 コミュニケーションとしての音楽  カート・ヴォネガットの「ハーモニウム」  
 秘境的な性格と誤配  ハイファイとローファイ  
 音楽の宛先――どこから来てどこへゆくのか  
 【注および作品ガイド】
  
第6章 音楽のプロ/アマ?
 プロフェッショナル/アマチュアの区別?  金銭と職業というファクター  
 他者の存在  「日曜作曲家」アイヴス  
 神様に捧げる音楽  アマチュアの思想――ロラン・バルト  
 マスコミ・物語・売れる  プロとアマの責任
 【注および作品ガイド】

第7章 視覚的なるものと音楽の密接な関係
 音楽が見えていない  映像が気づかせる音  
 ゴダール『映画史』の完全サウンドトラック  映画の音楽  
 アニメーションの音楽  ヴィデオ・クリップ  コンピュータ・ゲーム  
 音楽はジャンルを越境する  メディア・アート――美術の音楽化?  音を感じさせるオブジェ
 ハイナー・ゲッベルスの《ブラック・オン・ホワイト》
 S・ライヒ《ケイヴ》とR・アシュリー《ダスト》  譚盾の「ウオーター・パーカッション」の方向性
 柴田南雄のシアターピース作品  「綜合」の地平
 【注および作品ガイド】
  
第8章 身体と音楽
 キップ・ハンラハンのCDアルバム  太鼓――手の音楽  
 音楽から立ち上がる身体  指――二十世紀のギター的身体  
 楽器・道具・身体  ダンス――音楽を奏でる身体  芸術・詩・うた
 【注および作品ガイド】
 
第9章 生命と音楽
 音楽は毒か薬か?  モーツァルトと牛の乳  
 生命に内在するリズム  数の学問・天体の音楽・アポロン的音楽  
 クジラの「唄」  音楽療法  ヒーリング  
 音楽は聴覚だけの問題ではない
 【注および作品ガイド】

第10章 音楽の倫理――消費を超えて
 なぜ音楽するのか?  音楽的欲望とは何か?  
 音楽的記憶とは何か?  音楽の「消費」とは何か?  
 耳馴れ・洗脳・くりかえし  二つの消費――芸術と経済  
 消費の後に残る何か――アウラ/強度  音楽の倫理に向けて――「聴く」こと

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