2014/08/11

露木達也さんソロアルバム「agora」マスタリングを終えて特別インタビュー(その2)


露木達也さんソロアルバム「agora」マスタリングを終えて特別インタビュー(その2)
「音楽が伝わるDSD。演奏をそのまま伝えるためのマスタリング」
インタビュアー:Mush(Saidera Mastering)

ボサノバ&ブラジリアンギタリストである露木達也さんの初のソロアルバム「agora」。露木さん本人と、録音・ミックスエンジニアは名手鎌田岳彦さん、サウンドプロデューサーの加藤みちあきさん、プロデューサーの原田雅子、DSDマスタリングをやらせていただいたオノ セイゲンを加えて、マスタリングを終えた段階でお話を伺いました。CDは7月9日にリリースされ、後追いでハイレゾが配信スタート予定です。

インタービュー(その1)はこちら。
露木達也さんソロアルバム「agora」マスタリングを終えて特別インタビュー(その1)

Mush:ではマスタリング後の印象は?

加藤:会う人みんなに聴かせるのですが、エンジニアの友達なんかも「これミックスもいいけどマスタリングもいいね!」と言ってくれるんですよ。なにも予備知識を与えなくても。普通はマスタリングの前後を比べてマスタリングいいねってなるけど、マスタリング前を聴かせなくてもそういう答えが返ってきて。すごく有機的に結合している感じがする。鎌田さんのミックスももちろん良くて、それがより音楽的になっていて。

鎌田:マスタリングですごい色々なことをやっているのではなくて、僕のやっていることの延長線上にセイゲンさんがいるみたいな感覚ですよね。いかに録った時のクオリティや音楽的な要素をCDとかDSDのフォーマットの中でかたちにしていくかということがマスタリングだと思うんですけど、そこのバトンタッチは全然問題なくできました。

原田:セイゲンさんも、ちょっと聴いただけで「まさにDSD向けですね」っておっしゃってましたしね。

加藤:僕はDSDの音すごいいいなと思いました。よくハイレゾに意味があるのか?みたいな話題があって懐疑的な気持ちもあったんですが、ぜんぜん違うじゃんって。意味ないって言ってる人聴いたことあるのかって思いました(笑い)。周波数がどうとかっていうことではなく音楽的な感じがとてもある。だからハイレゾはオーディオファンだけのものだけじゃなくて、音楽ファンにこそ聴いてもらいたい。


Mush:ハイレゾについてよく周波数やスペックで語られることが多いですが、制作現場はそういう風に聴いてることはありませんからね。それと今回はCD用マスタリングで、少しコンプレッションした別バージョンも作りましたが、最終的にはコンプなしバージョンが採用になりました。そのコンプありなしの印象はどうでしたか?

加藤:圧倒的に僕はコンプレッションしていない方がよかったです。マスタリングしている時の感じが蘇るというか。露木さんは実力があるから、コンプなしでも全然大丈夫だし、音楽性にもとても合っていたと思います。

露木:やっぱりコンプありの方はギターや声の質感が変わってしまっている感じがあって、あと全体的に細かいところがわからなくなるように感じました。アコースティック感が減っちゃうというか。

原田:固有のものが減ってしまう感じがありました。普通っぽくなるというか。コンプありの方は急かされる感じというか、押し付けられるような印象がありました。ゆったり気持よく聴けるのはコンプなしの方でした。聴き比べるとよくわかりました。


Mush:音量の大小についてはなにか意見はありますか?

加藤:聴きたいものは聴くわけなので、僕自身は音量が大きい方がいいという考えはないです。

鎌田:一昔前の音圧戦争みたいな時代があって、特にFMでかかったときに小さいと制作側が問題にしてどんどん音圧を突っ込んでいって。アナログのコンプではできなかったことがデジタルのコンプになるとできて理屈上20dB上がるとか。だけどそれをすると例えば奥行き感とか全くない音楽になってしまうので。で、今だんだんジャンルによってはコンプかけないようになってきていて、それでもCDの世界ではある程度かけないと音量差が相当出てしまうのですけど。


Mush:最後に、発売中のCDと今後発売予定のハイレゾ音源について、聴きどころを教えてください。

露木:今作はハイレゾもCDもスピーカーで聴くと、距離感というか近くで音楽を聴いているようなイメージで聴けるんじゃないかと思います。じっくりと、音楽を聴くためだけの空間や時間を使ってほしいなと思います。

加藤:今作「agora」は露木達也のそのままを出しています。露木達也の音楽性と音質面とが一体になった音楽を聴いていただきたいですね。できればハイレゾでも楽しんでください!


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アーティスト名: 露木 達也
CDタイトル名 : agora (アゴラ)
定価 : 2500円(税別)
レーベル : Respiração Records
レコード番号:MM-1001

[収録曲]
1 Tucano
2 Este Seu Olhar
3 Triste
4 Luz Solar
5 Corcovado
6 Samambaia
7 Quando Te Vi
8 Seras Verdad
9 Nefertiti
10 Saudade fez um Samba ~ Você e eu
11 Lua no Mar ~海の月~
12 Estate
13 Se Todos Fossem Iguais a Você

露木 達也: Gut Guitar / Electric Guitar / Vocal
参加ミュージシャン: 石川 智 (percussions) 小畑 和彦 (guitar) 橋本 一子 (piano)
サウンドプロデューサー: 加藤 みちあき
レコーディング&ミックスエンジニア: 鎌田 岳彦
マスタリング: オノ セイゲン
Exec.プロデューサー: 原田 雅子
レコーディングスタジオ: Pastral Sound

official facebook page
http://urx.nu/at26

home page
http://tatsuya-tsuyuki.com/

"Tucano" Music Video
http://youtu.be/T_U40hsp63w

"Lua no Mar 〜海の月〜”
http://youtu.be/hj8CNa8hu7s

露木達也(つゆきたつや) 湘南出身のギタリスト/シンガー。
高校生時代にエレキギターを始めロックを演奏するギター少年だったが、やがてMiles DavisやJohn Coltraneなどの音楽からジャズに傾倒し、ECM系のサウンド、Pat Metheny、Keith Jarrett、John Abercrombieらに影響を受け、特にPat Methenyがブラジル音楽への一歩となり、Toninho Horta、遡ってAntonio Carlos Jobim、Joao Gilberto、Caetano Velosoらへとつながり、現在に至る。またクラシックギターに移行する過程では、師事していたアルゼンチン人ギタリストAriel Asselbornの影響で、Quique SinesiやCarlos Aguirre、Luis Salinasなどアルゼンチン・フォルクローレを通過し、現在の演奏スタイルを確立している。
現在はボサノバをメインのフィールドとしながら、複数のユニットで活動を続け、ソロライブも精力的に展開。ソロ活動では、繊細でハートフルなギターと柔らかいヴォイスの弾き語りで、幅広いオーディエンスを魅了。

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