CDマスタリング、DSDレコーディング、ハイレゾ配信&ストリーミング。
サイデラ・マスタリングは、常に最新のテクノロジーとワークフローにより「伝わる音」の技術を提供します。
2013/04/09
アナログ・テープの時代(その1)「テープのトランスポート」
ここ数日、20年以上前のアナログテープからリマスタリングの作業を行っています。厚み、艶のあるサウンドはやっぱり素晴らしいですがそれ以上に感動するのはミュージシャンやエンジニアがサウンドに込めた「限られたテイクの中で最高のものを残す」という気迫が伝わってくること。今は何テイクも何チャンネルも無限に録れる時代ですが、当時のエンジニアの意識を忘れてはいけません。
僕が音響ハウスで仕事をしていた当時はリズム録りなど、特にバンドの録音では24chのアナログ・マルチテープレコーダーが使われていました。2インチのアナログマルチはテープ自体の重さがなんと約5キロ。それを76cm/sのテープスピードで回すとたった15分しか録音できません。さらに再生時のテープ調整のためのリファレンス・トーン(1kHz、10kHz、100Hz)をそれぞれ30秒ずつ録音すると収録時間は正味13分ちょっとです。リズム録りのセッションでは1本のテープに2テイクずつ録音していくことが主流でした(1テイクOKというのもたまにありましたが)。つまりアルバム10曲のレコーディングではアナログテープは10本前後必要になるんです。アシスタント・エンジニアは総重量50キロにもなるテープたちを台車でリズム録りのスタジオからトラックダウンするスタジオに運びました。
トラックダウンもJ-POPやロックなどは2chのアナログ・ハーフインチテープに録音していきます。1本に2テイク、歌入り、インストを録っていきます。テープ節約のためにインストはDATのテープに録って、なんてこともありました。
いよいよトラックダウンが終了してテープのピックアップの時、A&Rは大仕事です。2インチ・アナログマルチ10本と、ハーフインチ・アナログテープの大移動です!台車でスタジオのロビーまで下ろしてそこから車やタクシー移動。どうしても電車に乗る必要がある時や海外でマスタリングする場合には磁気に触れないようにテープ一本ずつアルミホイルで巻いて梱包しました。
ポケットにUSBメモリを入れてマスタリング・スタジオに向かうなんて当時は全く考えられないことでした。ただ時代は変わってもマスターテープ(データ)の重要性は変わりません。これからもみなさんがマスターに込めた気迫に応えるマスタリングをしていきたいですね。
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