2010/10/22

マスタリング仕上がりのイメージ


目に見えない「音」「バランス」を図にしてみました。



マスタリングの音作りをイメージしてみてください。ORIGINAL MIXはTD済み音源(マスタリング前)。A~Gがそれに施された様々なマスタリング。それぞれのパーツの星をヴォーカル、四角をオケ、それぞれの大きさを音量レベル、線の太さを音の輪郭として想像してみてください。

A:オリジナルに忠実なバランス。ニュアンスは変えずに、音量感と輪郭を少し強調。ジャズやフュージョンなど、音量レベルよりも生楽器のリアリティを生かしたジャンルにおすすめ。ダグ・サックスのナチュラルできめ細かいサウンド。

B:キラキラ明るいサウンド。倍音が有りボーカルにスポットライトがあたっているかのようなイメージ。最近のJ-POP、特に女性ヴォーカルを華やかに引き立てるものはこのようなマスタリングが多いかと。図よりオケのバランスを大きくすれば、ボーカルのキラキラ感はバーニー・グランドマン、ボブ・ラドウィッグでしょうか。

C:ヴォーカルよりも、オケを重視したバランス。それぞれの楽器、演奏に太く奥行きをつける。海外のアーティストに多いHIP HOPやROCKの音作りはこんなイメージでしょうか。このバランスが可能なのは英語の発音もキーです。母音中心の日本語ではもう少しだけメインボーカルは引き立てる方がいい。クリス・ゲーリンジャーやハーブパワーズ Jr.のバランス、特に音像の大きなキックが特徴。

D:Aと同じ音像の大きさ。ただし立体的に。一つ一つの音の輪郭は、Aほどは強調しない。打ち込みのオケを自然に聴かせられるサウンド。キック、ベースを中心に音数が少ないR&Bやクラブ系にも向いている。例えていえばトム・コイン風でしょうか。

E:TV用や配信で、PCのスピーカーでも歌詞がはっきりと分かるように。歌を中心に聴かせるバランス。オケのレベルに対して、ヴォーカルを際立たせてるところがポイントです。

F: 歪みも音楽の一部として積極的に生かしていく。「とにかく音圧」「パワー感」を優先した音作り。グランジROCKなど。これできれば、録音やミックスの段階でチューブコンプやアナログのコンプ、アナログテープなどでかっこよく歪ませたサウンドを作っておくのが得策です。マスタリング段階でも全体をアナログテープを通したようなサウンドに変換することができます。サイデラ・マスタリングでは、実際にSTUDERのハーフインチや1/4インチのアナログテープを通すことができます。アナログテープを通す際には、1/2インチか1/4インチか、テープ速度は30IPSか15IPSか、テープの種類(AMPEX、AGFA、Scotch)、バイアスレベル、イコライゼーション(REC/REPRO)、録音レベルの組み合わせにより微妙に音作りを変えられるます。深いですよ。ぜひ立ち会いでも体験してみてください。

G:ヴォーカルを全面的に、最重要項目とした音作り。J-POPで音量、音圧ともギリギリまで大きくしたサウンドですが、決してボーカルは歪ませたりしません。1940~50年代のモノラル録音のジャズの名盤では、ボーカルはこのイメージです。ルイ・アームストロングやナット・キング・コール、エラなどのヴォーカルはこのぐらい音像が大きいですね。40年の録音機材、アナログテープの音質の変化を前提にした音作りです。デジタルレコーダーの時代になり、INとOUTは波形としては似た形になりましたが、アナログテープの時代は、再生されたときの音を前提にして録音する音(コンソールアウト=レコーダーインプット)を作ります。アナログテープに記録しきれないピークは丸くなります。高域をレベルを高くいれすぎると簡単に歪んでしまいます。常に録音レベルと高域とのせめぎ合いだったのです。

これらの図は、あくまでイメージですが、音は目に見えませんので(波形はダイナミックレンジだけは可視化できますが、そのバランス、内容やカラーは見えません)マスタリングのご要望などにもご利用ください。ジャンル、目的に合った仕上げをすることで音楽の魅力がぐっと増します。次回は音作りの注意点についてお話ししたいと思います。


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