2015/11/24

「Coffee Small Talk」第4回  ~国内のコーヒー事情編~

こんにちは。日に日に肌寒くなり、コーヒーがますます欲しくなる季節になりましたね。今回は国内のコーヒーショップがテーマです。ほんの一部ですが、ここはと思うところを紹介します!



カフェ・バッハ(東京・南千住)

音楽の父・バッハのイラストは有名です。よく見ると右手にカップを持っています。17世紀、バッハの時代のコーヒーはどんな味だったのでしょうか。東京の下町で50年続く老舗喫茶の店主・田口護さんの著書『珈琲大全』は珈琲屋を志す者のバイブルとして知られています。
店内は大人の社交場といったシックな雰囲気で、小綺麗な身なりをしたおじさまやおばさまのグループで賑わっています。作業服姿の若い男性やOLもひとり座って本を読み、うっすらとバロック音楽が流れている。サービスの心地よい距離感とあいまって、毎日通いたくなる落ち着きがあります。運良くカウンター席に案内されれば、美しい所作で無駄な動きの一切ない、神業ドリップを見ることが出来ます。
超オーソドックスなこちらのスタイルを真似しようと、僕はバッハオリジナルの台形ドリッパーを愛用しています。



カフェ・ド・ランブル(銀座)
こちらも言わずと知れた王道です。銀座で60年以上「珈琲だけの店」を看板に営業を続けているそうです。
目を細め、ケトルはほとんど動かさず、ネルをくゆらす左手の動きに集中し、湯が落ちる一点を見つめる。ネルドリップはまさに職人芸です。ここでは接客~挽豆~ドリップの工程が完全に分業していて、ドリップはその頂点に位置するようです。
採れたて挽きたて淹れたて、鮮度重視のスペシャルティー活況の現代に、敢えて一杯数千円のオールドビーンズで、めくるめく世界を探訪するのも粋なものです。
ランブルを経て独立開業したのが、こちらもまた有名な大坊珈琲店です。2013年に閉店してしまったため、庶民から青山界隈の各界セレブをも唸らせたネルドリップをもう飲むことはできません。大坊勝次さんをゲストに招いてのコーヒーイベントは随所で行なわれています。また、直々に焙煎を学んだお弟子さんが恵比寿にTRAMというお店をオープンしたそうで、ぜひ行ってみたいですね。



丸山珈琲(長野・軽井沢)
※東京西麻布にも支店あり

2014年、日本人初のバリスタ世界チャンピオンを輩出したことでも話題となりました。空気はうまい、水は綺麗、標高1,000mの軽井沢に本社を構え、世界で買い付けたスペシャルティーコーヒーを焙煎し、最高の技術とおもてなしの精神で…(略)つまり、おいしくならない訳がないのです。
ゲイシャと聞いて何を思い浮かべますか?「芸者」ではなく、これはコーヒー豆の銘柄でGESHAあるいはGEISHAという表記です。初めて飲んだのは、スペシャルティーのスの字も知らない頃でした。まるでフルーツティーを飲んでいるような華やかさな味に驚愕しました。パナマのエスメラルダという有名な農園で収穫されるロットは、毎年最高値で取引されます。
希少で高価なゲイシャを最高のコンディションで提供できるお店は決して多くありません。豆の成分を余すところなく抽出するフレンチプレスは丸山の自信の表れだと思います。



SHOZO COFFEE(栃木・那須/黒磯)
※東京青山に支店あり

東京から車を走らせて3時間余り、周辺を訪れる際は是非立ち寄りたい場所です。カフェだけでなく、アンティークや雑貨、衣服やインテリアを扱うお店、ギャラリーや音楽ホールもあります。
北海道の焙煎家から仕入れた深煎りのコーヒー。高原に雪が降り、外が冷たく澄んだ空気に変わる頃、石油ストーブの温もりを感じながら飲む一杯は、たとえようもなく格別の味わいでした。
実はSHOZO、サイデラからは徒歩10分ほどの青山にも小さく出店しています。すぐ隣にはブルーボトルコーヒーもありますし、ハシゴするのもいいですね。マスタリングのお帰りの際に是非立ち寄ってみてください。



カフェ・ヴィヴモン・ディモンシュ(鎌倉)

初めてお店を訪れたのはもう10年以上前、高校時代の先輩に連れられて鎌倉で遊んだ時のことでした。明るい店内と、ワッフル地にレタス・ハム・卵を挟んだゴーフル・サレ、バックに流れる軽快なフレンチポップス。店名はトリュフォーの映画『日曜日が待ち遠しい』から取ったそうです。
珈琲はブレンドから、深煎り~浅煎りのスペシャルティーまで、いつもかなりの数種類あります。迷ったら今日の気分を伝えてみると、親切なスタッフがオススメしてくれます。フードメニューも魅力で、有名なオムレツやパフェ以外にも、ブラジル料理のムケッカなんてチョイスするのもオシャレです。
僕は店主・堀内隆志さんの大ファンで、きっと生涯その背中を勝手に追いかけるような存在です。いつもニコニコ。笑顔につられて面白い人がどんどん集まってきます。鎌倉といえばディモンシュ、ディモンシュは堀内さんそのもの、つまり僕のなかで鎌倉=堀内さんというくらいのインパクトがあります。一歩店を出れば本にトークにイベントに引っ張りだこの有名人なのに、観光地鎌倉の一カフェの店主としてのスタンスを崩さない。素敵です。
繁忙期にはドアの外に客が列を作っていることもしょっちゅうで、大体いつも満席、店外のベンチで待つことしばしばです。千葉から片道2時間の電車に揺られ、運悪く店休日だったということも少なくありません。涙に濡れながら由比ヶ浜を歩くと、カフェが海の砂粒ほどある鎌倉でディモンシュ以外に行き場がない自分が笑えます。
ちなみに、神奈川のローカルラジオ【湘南ビーチFM】で毎週日曜は《Na Praia》という番組を放送しています。ブラジル・ミュージックにも造詣深いDJ堀内さんが、ナラ・レオンからブラジル現地の若手アーティストの音源まで紹介しています。「日曜日が待ち遠しい」とはまさにこのこと。



KAFE工船(京都)
「東の堀内、西オオヤ。」僕が勝手に言っているだけかもしれませんが、このお二方を常に尊敬の眼差しで見つめています。
京都御所の近くに、オオヤミノルさんのお店はあります。スタッフの女性がカウンターごしにネルドリップで丁寧に淹れてくれます。僕は深煎りのドリップコーヒーで、これ以上強い珈琲を飲んだことがありません。京都の端っこで、苦味もここまでいくと芸術的だなと思いました。
カウンターが1席だけ空いていて、右隣にはオオヤさんが座っていました。スタッフとの世間話が面白くて、ついつい聞き入ってしまいました。コーヒーはもちろん料理やサービスに関しては相当厳しい意見をお持ちの方なのだなと思いました。
ある雑誌の特集でオオヤさんが語ったこの一節が好きで、何度も読み返します。
「店主が『私の好きな本並べてますぅ」みたいな本棚おいたカフェはあるけど、肝心な椅子の座り心地は悪いし、お前の好きな本なんて興味ないわて感じで(笑)。ぼくは『オレ流』なんて街にいちばんいらんもんだと思うてます。喫茶店はいったいつから自己表現のひとつになっちゃったんでしょうかね…(中略)悩める個人のみすぼらしいオリジナリティを公共の場で他人におしつけるなんて、何て下品なと思いますけど」
毎月25日、京都•北野天満宮の縁日の屋台でオオヤさん自らコーヒサービスをしてくれるとか。
オオヤさんのことを詳しく知りたい方には、著書『美味しいコーヒーって、なんだ?』(マガジンハウス刊)をおすすめします。

==========

王道から僕の趣味まで、数を絞ってご紹介しました。もちろんまだまだ他にも素晴らしいお店はありますよ!

次回はサイデラで採用しているコーヒー器具のことや、おいしさの秘訣などをご紹介します。

0 件のコメント:

コメントを投稿