2014/07/22

アンサンブルグループ「Pacificmodern」特別インタビュー (その3)

(その3)ホールが「楽器として鳴り響く配置」と「攻めの演奏」を追求する

山下いずる×山下美音理×オノ セイゲン


インタビュアー:久保 奈津実
(サイデラ・マスタリング)

サイデラ・マスタリングでは、マスタリングのみならず、コンサートホールやライブ会場でのDSDレコーディングも行っています。今回はチェリストの山下いずるさん、ヴァイオリニストの山下美音理さんのアンサンブルグループ『Pacificmodern』(パシフィックモダン)のレコーディングについてのインタビューです。
(その1)はこちら→http://saideramastering.blogspot.jp/2014/07/pacificmodern.html
(その2)はこちら→http://saideramastering.blogspot.jp/2014/07/pacificmodern-2.html


久保:ホールでレコーディングした時に、他に印象に残ったことはありましたか?

山下いずる:レコーディングの時に演奏者が普通の並びではなかったことですね。ピアノはステージ上で、僕たちはステージを降りたその下にいた。音はホールの2階席から録りました。謎の並びになったのだけど(笑)、オノさんがそうするといいですよと言うので、やってみたんですね。

山下美音理:音を出してみると素晴らしかった。アンサンブルが素晴らしくマッチしているという、不思議な現象が起こったんですね。


オノ:ステージ上でピアノの位置を決めて、ヴァイオリンとチェロは客席というか、一段降りた、普通は客席があるアリーナの位置で演奏してもらったんです。とても離れているわけではないのですが、コンサートの舞台という視点ではないですね。そういう意味では変わった配置になります。レコーディングのときは、楽器の位置は、必ずしもライブと同じ並びの必要はまったくありません。(※1)

久保:その配置はいくつか試してみて決めたものでしたか?


山下いずる:いや、もうオノさんがすぐに決めました。初めてこの配置でいくと聞いたときはちょっと驚きました。これでいいの?っていう。普通はすぐそこにいるピアニストが自分達より高い場所にいる(笑)。

オノ:音は短く何度も出してもらったでしょ。少し動かす度に。その一瞬で響きを聴くんです。どの方向だとホールが楽器の一部として、よく鳴ってくれるかをね。最後にほんの少しだけ椅子を動かしましたね。大事なことは、一歩前とか後ろとか、演奏者の微妙な位置を調整したり、吸音材をピアノに置くといったような、ちょっとした工夫です。とにかくホール全体が、それぞれの楽器の延長線上であるようにする。

山下美音理:あちらに置きましょうとか、こちらに置きましょうとか、ピアノの下にこれを置きましょうとか、ちょっとあのあたりにあれが必要ですよねとか、オノさんが仰っていくごとに音が変わっていきました。特に印象的だったのが、私が弱音で弾きたいけど、ちょっと音が響きすぎてしまうという時があって、オノさんがヴァイオリンの向きをちょっと変えて、吸音材を置いて、その部分だけこの向きで弾くといいよ、と言ってくれたんです。たった数小節なんですけど、言われた通りにほんの少しだけ、向きを変えながら弾いてみました。そうすると音が変わったんです!「うわすごい!」と思いました。ほんとにちょっと、10センチぐらいなんですけど、ホントに変わった!という場所があって。

山下いずる:最初に「録音物をよりよくするために、どう座ってどういうふうに弾けばいいか」という視点があった方がいいのだなあと感じました。

山下美音理:どんどん試すと変わるから面白い!というのがありました。


オノ:マイクが遠い方が、楽器のダイレクト音より空間の響きもひろがりもでる。この小さいホールだと遠くに置いたつもりでも、実は演奏者との距離は近い。演奏者との距離が近い方が細かい演奏手法が見える、練習とか自分の演奏を確認したい時には鏡のようでいいですよね。


山下いずる:弦楽器は聴く場所によって大分音が変わるということが改めて分かりました。間近で聞いていると、意外と楽器のノイズがある。それが後ろにいくほど判らなくなってくる。「コンサートを楽しむ」という観点からするとそれに最適な距離があるんだなあと思いました。今回TASCAM DA-3000まで買っちゃった(笑)。


久保:目的に合わせたベストな距離感があるということですね。今回、日本ではまだ珍しいファツィオリのピアノでのレコーディングとのことでしたが、実際に音を聴いてみていかがでしたか。


山下いずる:ファツィオリは、僕達もその音をはじめて体験しました。一緒に演奏してみて気が付いたんですが、透き通ってるというか「弦とよく融け合うピアノだな」と思ったんです。要所要所でこのポイントにどの音が鳴っているかが明確に分かるので、特に室内楽をやるときに、一体感があった。演奏中にどこに合わせて良いかが分かる。


山下美音理:音程が明確、すっきりしている印象でした。演奏中に「ここでいける!」というのがわかるし、相手の「ここに来て!」というのもわかる。録音されたものを改めて聴いてみると、音がよく合わさっている感じ。それぞれの楽器と、対等になりやすい。

久保:なるほど。レコーディングは3日間行ったとのことですが、1~3日目で弾き方や聴き方に何か変化がありましたか?

山下いずる:ありました。だんだん追い込まれて(笑)、ネガティブにいえば「保守的」になる傾向が出そうだった。保守的になることをやめないと、という気持ちとのせめぎあいでしたね。後から気づいたのですが、最初2テイク録音して、自分たちの気持ちがそのまま分かるんです。「ちょっと怖がって弾いている・・・怖いけど、頑張って挑戦した・・」というのが。そして、どちらを選ぼうかと思った時に、やはり「挑戦した」方を選びたくなるんですね。守りに入っている方は、合ってるけど、これ聴いて楽しいかと言われたらちょっと違うと思いました。3日続けていると、調子がいい場所と悪い場所が出てきて、日を追うごとに戦う部分が増えてくる。怖くなる率が高くなる。

山下美音理:間違えちゃうのを恐れているというか…。でもそこにそのままでいてはだめなんですね。録音って自分の状態が素直に出てしまうんです。やっぱり「挑戦していないと」だめなんですよね。

山下いずる:逆にノってきたときもあるけどね。ずっと楽しく弾いていられる瞬間があった。


山下美音理:「これは来てるぞ!!」と感じられるピークがあったんです。2日目の最後。3人が、ある瞬間、同じ時にピークを感じた瞬間が3テイクぐらいあって、ピアニストが「今のは、10年に1本来るかどうかみたいな、すごくいい波がきた!」って言いました。経験の浅い私たちは、まだまだいけると思ったけど、後で聴いてみると、確かにそこが一番よかった(笑)。


山下いずる:それぞれが「いくぞ!」って時や、やっぱり自分で「良かったな」と実感したテイクは良かった。それを超えると段々息切れしてくる(笑)。弦は守りに入ると音がこもるのか、何かが違うんです…。弾いていて縦ノリがふえすぎると、普通に拍子を数えている感じになってしまいます。ちょっとだけ転び始めそうな時が「いいな」と実感している時、その先に行きたいけれど我慢もしている、その「せめぎあい」が楽しいんですよね!それがなく、音楽が固くなりすぎて「次の拍はこう来るよね」と、分かっちゃっているときは安全圏というか、進まない。


山下美音理:ギリギリの所で、ミスをするかどうか、すれすれを行っているときが一番いい時なんだろうなって思います。


山下いずる:演奏家としては「軽くやってるんですよ~。」って言いたいけれども、実際はぎりぎり(笑)。だけど、余裕しゃくしゃくでやっていたら、それはちょっと物足りない。


山下美音理:巨匠の演奏も、レベルが違うけれどきっとせめぎあいがあるからこそ生き生きしてるんではないかと。そういう限界を超えようとした時に初めて感動が伝わると思う。この感覚はレコーディングをして、自分達の音を聴いてみると改めて分かりました


山下いずる:同じ音なのに、全然違う。今回のDSDレコーディングは演奏家としてとてもいい経験になりました。演奏会で弾いていて「怖がっている部分」、それがお客さんにも伝わっているんだろうなということが、DSDレコーディングを聴いてみると身に沁みた、というか。やっぱり、怖がるくらいだったら「一歩挑戦してみよう!」という気持ちがいいですね。


山下美音理:エラーがでたとしても、アクセルを踏んだか踏まないかは大きな差になる。だったら「踏もうよ!」という方向がいい。どうしても守りにはいる時もあります。そりゃミスしたくないしね(笑)。だけど、そこで怖がってどうする!という葛藤もある。「後先考えず」とはちょっと違う「怖いけど、挑戦しよう!一歩踏みだそう!」というのが大事なんだと思います。


※1. (参考)レコーディング時の演奏者の位置について


アンサンブルグループ『Pacificmodern』(パシフィックモダン)今後の活動予定はこちら

Pacificmodernが指導する室内楽ワークショップ発表会
講師演奏としてラフマニノフのピアノ三重奏曲第1番を演奏予定。
ピアノ:川田健太郎
ヤマハ銀座店6Fコンサートサロン
8/6 18:30~

Pacificmodernが指導するジュニア弦楽教室が出演するロビーコンサート
アプリコみんなの音楽祭2014
大田区民ホールアプリコ
7/26 13:00-13:30
7/27 12:00-12:30

Pacificmodernホームページ:www.pacificmodern.net/


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